研究課題/領域番号 |
19K20647
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
大貫 良幸 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (90835993)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 皮質脳波 / 機能的磁気共鳴画像法 / 時間推定 |
研究実績の概要 |
将来の時間を推定する行動の一種に、将来の事象や取り掛かる作業に要する時間の推定「予想時間評価」がある。ヒトの脳深部にある「海馬」は、過去から現在までの経過時間を扱うだけでなく、将来起こる事象の推定も担うことが報告されている。しかし、予想時間評価機能への関与は明らかではない。 本研究では、予測時間評価における海馬機能の解明するため、ヒトの海馬活動を機能的脳画像計測(fMRI)と皮質脳波計測から計測する。また、海馬神経回路に対する電気刺激や外科的介入による行動の変化とそれに対応する脳活動の変化を調査している。今年度は、健常成人を対象とした予想時間評価課題時のfMRI計測・解析、難治性てんかん患者で頭蓋内に電極を留置した患者に対する海馬の局所電位計測と電気刺激による海馬活動への介入、てんかんの外科的治療法である「海馬多切術」を受ける患者に予想時間評価課題とfMRI計測を実施した。予想時間評価課題を実施している健常成人のfMRIデータを用いて、予想時間毎の海馬活動の特徴を解析している。これまで得た結果では、コントロール条件と比較して、予想した時間に到達するまでの海馬活動の上昇が認められた。また、頭蓋内電極を留置した難治性てんかん患者2名に対して、予想時間評価課題の行動結果と皮質脳活動を得ることが出来た。また、海馬多切術を受けた患者2名に対して、術前と術後1ヶ月時に予想時間評価課題の行動実験とfMRI計測を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想時間評価課題を実施している健常成人のfMRIデータに対する多変量解析結果を論文にまとめている状況である。また、今年度は難治性てんかん患者の皮質脳波計測、および、海馬多切患者に対する予想時間評価課題の行動実験とfMRI計測を実施することが出来た。今年度の実験計画では、海馬の神経活動の一時的に変調させ、予想時間評価の変化の検証を試みることも予定していたが、検査対象の患者では、海馬に対する電気刺激によるてんかん発作が生じる恐れがあったことから、今年度は実施出来なかった。しかし、来年度も検査の対象となる患者が見込めることから、研究の全体的な進捗はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、fMRI計測、皮質脳波計測、電気刺激介入、海馬多切術前後の行動実験とfMRI計測を継続する。症例を重ねて、論文および学会報告することを予定している。電気刺激による海馬活動への介入検査では、てんかん発作を抑える為の刺激強度の調整、課題中における電気刺激のタイミングを検証する。来年度も患者の安全を最優先しつつ、引き続き本検査の実施を試みる。
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