研究実績の概要 |
「予想時間評価」とは将来の事象や取り掛かる作業に要する時間を推定する認知機能である。ヒトの脳深部にあり、記憶の符号化を担うとされる「海馬」は、将来起こる事象の推定も担うことが報告されているが、予想時間評価機能への関与は明らかではない。 本研究では、 予測時間評価における海馬機能の解明するため、ヒトの海馬活動を機能的脳画像計測(fMRI)と皮質脳波計測(ECoG)から計測する。また、海馬神経回路に対する電気刺激や外科的介入による行動の変化とそれに対応する脳活動の変化を調査している。今年度は、難治性 てんかん患者で頭蓋内に電極を留置した患者に対する海馬の局所電位計測と電気刺激による海馬活動への介入、てんかんの外科的治療法である「海馬多切術」を 受ける患者に予想時間評価課題とfMRI計測を実施した。予想時間評価課題を実施している健常成人のfMRIデータを用いて、予想時間毎の海馬活動の特徴を解析している。今年度に得た結果では、頭蓋内電極を留置した難治性てんかん患者3名に対して、予想時間評価課題中の海馬の特定の周波数帯域が予想時間評価の情報を符号化する結果を得た。さらに、海馬多切術を受けた患者2名と軟膜下皮質多切術を受けた患者1名に対して、術前, 術後1ヶ月, 術後6ヶ月時に予想時間評価課題の行動実験とfMRI計測を実施した。その結果、予想時間評価課題の正答時間と予想時間の差が手術の前後で多く変容したことが明らかになった。これまで得られた本研究成果を国内外の学会にて発表を行った。
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