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2021 年度 実施状況報告書

盲導犬は何を見る?動きに対する注視から迫る使役犬化の歴史

研究課題

研究課題/領域番号 19K20649
研究機関北里大学

研究代表者

小倉 匡俊  北里大学, 獣医学部, 講師 (30723564)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード実験心理学 / 応用動物行動学 / 比較認知科学 / アイトラッキング
研究実績の概要

本研究ではイヌが使役動物化される鍵となった視覚認知能力に迫る。その過程においてヒトとの関係の中で独自に獲得した認知能力、特に視覚的な意思疎通の成立において動き情報が果たした役割に焦点を当てる。動画に対する注視についてアイトラッカーを用い盲導犬(訓練前後と勤務開始後)と家庭犬、ヒトを対象とする比較実験をおこない、注視パターンの類似点と相違点を解明する。
実験1)ヒト全身映像による指示に対し注意を向ける部位の特定
実験2)イヌ全身映像による感情表現に対し注意を向ける部位の特定
実験3)使役場面において注意を向ける環境刺激の特定
以上の結果を対象間で比較し、使役動物化する過程でヒトからイヌが受けた影響を明らかにする。2020年度には実験2を中心に、イヌどうしの関係に焦点を当てた実験を実施した。それぞれ映像を呈示した際の眼球運動を解析し、ヒトとのコミュニケーション場面や使役場面における視覚注意特性を評価した。本研究では日本盲導犬協会神奈川訓練センターで飼育されている盲導犬訓練個体および一般家庭で飼育されている家庭犬を対象に実験をおこなう計画としていたが、本年度はコロナ禍の影響により訓練センターに赴くことができなかった。そのため家庭犬のみを対象として16個体を実験に供した。実験場所は当研究室内の実験室とした。収集したデータは現在解析を進めている。また今後はヒトを対象とした実験および盲導犬訓練個体を対象とした追加実験、訓練個体が盲導犬になることができたか追跡調査をおこない、データとの関連を調べていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究ではアイトラッカーを用いて盲導犬・家庭犬・ヒトの視線の動き方の類似点・相違点を調べる。イヌ・ヒト間の意思疎通に動き情報が果たす役割を解明し、使役動物化される過程においてヒトの意図の動きに基づく理解が鍵となったという仮説の検証を目的とする。アイトラッカーとは眼球運動を追跡し、呈示視覚刺激に対する注視パターンを調べるシステムである。まずアイトラッカーを装着した液晶画面の前に、実験対象となるイヌを「伏せ」の体勢で待機させる。液晶画面に映像を呈示し、呈示中のイヌの眼球運動をアイトラッカーにより記録する。このデータから視線の動き方の指標を調べることができる。ヒトを対象とする場合も実験機器や手順は同様である。本研究では1)ヒト全身映像、2)イヌ全身映像、3)風景映像に対する視線の動かし方を実験対象間で比較する。実験対象は盲導犬と家庭犬、ヒトとする。実験は盲導犬訓練センターと申請者の所属研究室で実施する。
このうち2021年度には2)を呈示する実験をおこなった。実験対象は一般家庭で飼育されている家庭犬16個体とした。家庭犬については延べ14日間に渡って実験をおこない、またそれに先だって実験のためのトレーニングに延べ57日間を費やした。本研究で予定していた盲導犬訓練個体を対象とする実験については、本年度はコロナ禍の影響により訓練センターに赴くことができず実施できなかった。収集したデータは現在解析を進めている。
本研究では当初の計画において2021年度を終了年度としていた。しかし先述のとおりコロナ禍の影響により研究計画の一部を遂行できず、実施年度を延長することとなった。そのため、現在の進捗状況は、当初計画よりもやや遅れていると評価できる。

今後の研究の推進方策

これまでの研究はコロナ禍の影響により当初計画よりもやや遅れており、それを補うために今後は以下のように推進する予定としている。なお、本研究は当初3年間の実施計画としており、2021年度は最終年度であったが研究実施期間を1年間延長し以下の研究推進を計画している。
・盲導犬訓練個体の追跡調査および実験:2020年度および2021年度はコロナ禍の影響により盲導犬訓練センターに赴いて実験をおこなうことができなかった。2022年度も予断を許さない状況ではあるが、時機を見て追加実験をおこなう予定である。また2019年度に対象とした盲導犬は訓練個体であり、その後に盲導犬となる個体は過去の実績からおよそ6割程度であると予想される。そこで、対象個体について盲導犬となれたか否か追跡調査をおこない、盲導犬としての適正に影響する視覚認知能力を解明していく。
・ヒトを対象とした実験の開始:本研究ではイヌが使役犬化される鍵となった視覚認知能力に迫る。使役犬化される過程において、飼い主であるヒトから受けた影響は大きいと考えられる。そこで、視覚認知能力についてヒトと共有しているか、もしくは独自の能力を獲得しているか、ヒトとイヌを比較することで考察する。そのために欠かせないヒトのデータの収集に着手する。
・実験対象個体の追加:2021年度までに実施した実験について、盲導犬および家庭犬の新たな対象個体で実験を実施し、収集したデータの信頼性を高める。2021年度までは累計54個体を対象としたため、2022年度も20個体程度の個体数で実験をおこなう。

次年度使用額が生じた理由

今年度はコロナ禍の影響により、研究計画段階で予定していた日本盲導犬協会神奈川訓練センターでの実験を実施することができなかった。そのため申請者の勤務地である青森県十和田市の北里大学獣医学部キャンパスとの間の旅費および実験機器輸送費などの支出がゼロとなった。計画していた実験は研究実施期間を延長して次年度に実施を考えており、次年度使用額はそこに充てる予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [学会発表] 動物福祉(アニマルウェルフェア)の理論2022

    • 著者名/発表者名
      小倉匡俊
    • 学会等名
      第30回日本飼育技術学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 盲導犬におけるヒトの指差しに対する理解の注視パターンに基づく検討2021

    • 著者名/発表者名
      小倉匡俊, 勝山和佳奈, 樋口美空
    • 学会等名
      動物の行動と管理学会2021年度研究発表会
  • [備考] 北里大学 獣医学部 動物資源科学科 動物行動学研究室

    • URL

      http://kitasato-animal-behavior.net/

  • [備考] www.t-ogu.net

    • URL

      http://www.t-ogu.net/

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公開日: 2022-12-28  

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