研究課題/領域番号 |
19K20658
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
梨本 裕司 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (80757617)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロ流体プローブ / オルガノイド / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
本研究では、オルガノイド作出の制御,および安定的な作出を目指し,オルガノイド周囲の環境を時空間的に制御するマイクロ流体プローブを検討している.令和元年度は,システムの構築と,システムの稼働確認を兼ねた三次元細胞凝集塊の機能評価を検討した.走査型イオンコンダクタンス顕微鏡としての利用に先立ち,比較的動作が単純な走査型電気化学顕微鏡(SECM)としての利用を検討した.オルガノイドと同程度の大きさを有するがん細胞の凝集塊(スフェロイド)を作成し,機能評価を行ったところ,スフェロイドの大きさの増加に伴う酸素消費量の増加を確認した.スフェロイドの内部に,壊死様のコアが形成される場合においては,体積あたりの酸素消費量が減少することが確認できた.本内容に関しては,現在投稿論文として,原稿を準備中である.システムの走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)としての利用としては,イオン電流値の減少に基づく距離制御が可能であることを確認したが,ノイズレベルや走査アルゴリズムなどの面でシステムの見直しを検討している.オルガノイド培養システムに関しては,ヒト間葉系幹細胞(hMSC)やマウス胚性幹細胞(mESC)を材料に検討を開始しており,骨分化のプロトコルなどを確立することに成功した.幹細胞の挙動として,骨分化に伴う細胞の形態変化を,既存のSICMで評価した.その結果,分化に伴うhMSCの細胞の高さの変化をとらえることに成功した.本内容に関しても,現在投稿論文としてまとめているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イメージング機能に課題を残したものの,距離制御機能が付与されたシステムの構築ができた.また,テスト結果の一部を,投稿論文として準備することができた。以上のことから、本プロジェクトは,概ねスケジュール通りに進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,引き続きシステム動作の改良を進めていく.システムのノイズ対策,制御アルゴリズムの改良を進めていく.自作のカレントアンプなどの作製を進めており,年度早期の使用開始を目指す.一方で,測定対象となる幹細胞に関しても,追加の準備を進めていく.新型コロナウィルス対策に伴う,所属機関,および細胞提供機関の活動の自粛により,細胞の入手に若干の遅れをきたしているが,こちらも活動開始のめどが立ち次第,入手し,利用の開始を目指す.システムの探針の作製条件に関しては,おおよそ作製条件が出ている.探針とポンプの接続,安定して探針先端にフローを付与可能な条件を確認していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
幹細胞を利用する環境を整えるためのドキュメント整備,環境整備に予想以上の時間を要した.幹細胞の培養開始が遅れたため,培養用試薬の費用に余剰が生じたが,翌年度に計画的に利用する予定である.
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