研究課題
本研究は,部位特異的な分化誘導を実現するマイクロ流体プローブの創出を目的として行われた.細胞への刺激を精緻に行うため,探針-対象間の距離を制御する必要があった.このため,イオン電流をベースとした探針-距離制御を検討した.プローブを配置後,マイクロ流体プローブによる局所的な刺激が可能であるか,確認を行った.可動域の大きなXYZ自動ステージを用いた位置制御機構を用い,イオン電流を指標とした探針の位置制御を行ったところ,ミニ臓器モデルと呼ばれる,オルガノイドと同程度の大きさの細胞凝集体に対して正確に探針を配置することができた.位置制御の精度を示すものとして,イオン電流を利用して,スフェロイドの全体形状を捉えることに成功した.一方,導入口,吸引口の二つの流路を備えるマイクロ流体プローブを作製し,溶液の局所投与を行ったところ,導入:吸引の流量比が1:20程度で導入した溶液の拡散を抑制できることが示唆された.マイクロ流体プローブを用いて,局所的に細胞凝集体に染色を試みたところ,マイクロ流体プローブを配置した部位特異的に,細胞核を染色することができた.このことは,マイクロ流体プローブによる部位特異的な分化刺激を付与できる可能性を示唆している.一方,形態形成後の構造物の検出を目的として,モデル深部の血管の位置検出を検討した.イオン電流を指標として,モデルへの穿刺を行ったところ,イオン電流値の変化を指標として,血管の位置が特定可能であり,更に血管内腔の形状をマイクロメートルスケールで可視化することに成功した.さらに,電気化学的に探針内の油水界面を制御することで,モデル深部から細胞質を回収し,遺伝子発現の定量評価が可能であることを確認した.以上,イオン電流を指標として,組織モデルに対する探針の位置制御,局所刺激,さらには,モデル深部の構造体の検出,回収を実現するシステムを開発した.
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Analytical Chemistry
巻: 93 ページ: 4902~4908
10.1021/acs.analchem.0c05174
Biosensors and Bioelectronics
巻: 181 ページ: 113123~113123
10.1016/j.bios.2021.113123
Chemistry Letters
巻: 50 ページ: 256~259
10.1246/cl.200732
The Analyst
巻: 145 ページ: 6342~6348
10.1039/d0an00979b
Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: 130 ページ: 539~544
10.1016/j.jbiosc.2020.06.014
Micromachines
巻: 11 ページ: 530~530
10.3390/mi11050530
Electrochimica Acta
巻: 340 ページ: 135979~135979
10.1016/j.electacta.2020.135979
Advanced Biosystems
巻: 4 ページ: 1900234~1900234
10.1002/adbi.201900234