研究実績の概要 |
トイレ環境は短時間滞在にもかかわらず日常下での事故(疾病,外傷等)の発生率が高い.温暖差によるヒートショックや血管迷走神経反射,怒責(いきみ)による血圧変動が循環系への負荷となるためである.さらにこれらの急激な血圧上昇は失神などの意識消失による外傷が発生する危険も伴う(トイレ環境下イベント).本研究課題の実現は,トイレ環境下での事故予防に寄与するものである.またトイレ環境下での無意識血圧測定の実現は,日常生活での定期的な血圧測定につながり,異常値の早期発見やスクリーニング適用など,その波及効果は大きい. トイレでの無意識計測に向け,従来の皮膚との直接接触を要する光学式センサではなく, 便座内に設置可能な圧電センサによる脈波伝播速度計測を行った(便座脈波伝播速度計測システム).本研究では 100 Hz 以下の低周波帯における感度が優れる,直径約 1.2 cm の円形圧電センサ (AYA-P 06s, 太陽誘電) を使用した.圧電センサで検出された振動より心弾図と脈動を分離する手法は申請者らによって開発されたものであり,これらの信号から脈波伝播速度を検出する手法はこれまで検討されていない. 本年度の研究では,便座脈波伝播速度計測システムによって計測される心弾図・脈動について,心拍間隔検出精度検証を行った.心拍の周期性を利用して重み付けを行うことで心拍検出精度の向上を試みた結果,提案アルゴリズムの適用により,心電図との誤差2%以内での心拍数計測が可能であることを明らかにした.
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