研究課題/領域番号 |
19K20666
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
田村 和輝 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 助教 (40822614)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波顕微鏡 / 定量的組織性状評価 / 弾性イメージング / 質量スペクトル |
研究実績の概要 |
本研究では,脳腫瘍組織を対象に硬さを指標とした病理標本の理解を目指し,硬さと分子分布との対応を検討する. 硬さの計測には広帯域集束超音波を用いた超音波顕微鏡を使用し,硬さの指標として体積弾性率に関係する固有音響インピーダンスと縦波音速の二次元象を取得する.また,分子分布は質量顕微鏡を用いて二次元的に取得した質量スペクトルを用いて,脂質の分布に注目して計測・解析を進めている. 2020年度は以下の二つの点に重点をおいて研究を実施した. 1)縦波音速計測:昨年度の検討で,脳腫瘍周辺の浮腫組織の音響特性の計測が困難であることを確認しており,この原因は脳組織が他の臓器に比べてタンパク質やコラーゲンの量が少ないことに関係することを確認した.信頼性の高い音響特性を収集するための試料処理のプロトコルを新規に作成し,心臓や肝臓などの先行例と同等の音響物性計測が可能となった.試料処理手法に関して Symposium on Ultrasonic Electronics 2020にて発表し,Young Scientist Awardを受賞した. 2)質量イメージング:質量顕微鏡を使用した質量スペクトルの計測を開始し,試料作成プロトコルや計測プロトコルを確定させた.質量分析技術はここ数年でも目まぐるしく発展しており,先行検討で報告されている質量スペクトル以外にも腫瘍化に関係する分子の候補をいくつか確認することができている. 以上の検討により,摘出直後の固有音響インピーダンス計測,凍結標本を用いた縦波音速計測,脂質を対象とした分子分布計測の準備が完了した状態にある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
縦波音速の試料処理のプロトコル作成に予定以上に時間を費やしており,計画がやや遅れている. 現段階で全ての計測手法の条件を確定できているため,最終年度にて複数個体を用いた比較が可能な状態にある.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に決定したプロトコルを元に,試料処理・計測・解析を行い,脳の正常部位・腫瘍周辺部位・腫瘍部位の機械物性および分子分布を取得する. 収集された分布を用いて機械物性と分子の組成の関連性を検討し,報告する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画のうち,超音波顕微鏡を用いた縦波音速計測の試料作成プロトコルの確定に予定以上の時間を費やしたため,計画が遅れている. 次年度使用額の大半は質量顕微鏡使用料および論文投稿費用に関係するものであり,2021年度に複数個体の実験・計測・解析を行う予定で,機器使用料および論文投稿に使用する. また,コロナウイルスの流行に関係して国際会議の旅費に関してもその大半を繰り越すこととし,国際会議以外の場で積極的に成果を発表するために支出する予定である.
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