研究課題/領域番号 |
19K20670
|
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
加藤 智子 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任助教 (90754367)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | アルツハイマー病 / 神経原線維変化 / タウイメージング |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病 (AD) や前頭側頭葉変性症などのタウオパチーと呼ばれる認知症疾患においては、異常にリン酸化されたタウ蛋白が神経原線維変化となって蓄積し、その度合いが認知症の進行度と強く相関することが知られている。その最も早期にタウ凝集体形成に先立って起こる現象は、タウオリゴマーの出現であり、タウオリゴマーは強い神経傷害性を有するとともに、タウ蛋白凝集体(神経原線維変化)の形成を促し、その脳内伝搬にも深く関わるとされる。 本研究は滋賀医科大学倫理審査委員会の承認を受けて行った。まず、2019年度は今まで滋賀医科大学でタウオリゴマー、タウ凝集体結合候補化合物として開発したShiga-X(ベンゾオキサゾール誘導体)、Shiga-Y(クルクミン誘導体)系などの約200種類の化合物の中から、滋賀医科大学ブレインバンクのヒト剖検脳組織標本を使った神経原線維変化との結合試験を行った。化合物は50%エタノール中に200μMまたは400μMの濃度で溶解し、脳切片を30分反応させた。洗浄後、蛍光顕微鏡で観察し、アルツハイマー病の神経原線維変化と結合するShiga-X34、Shiga-T12など数種類の化合物を得た。さらにShiga-X34、Shiga-T12について、ピック病や大脳皮質基底核変性症 (CBD) のタウ病変との結合を調べた。その結果、Shiga-X34はADの神経原線維変化のみならず老人斑にも結合した。またピック病のタウ病変にも結合したが、CBDのタウ病変には結合しなかった。Shiga-T12はアルツハイマー病の神経原線維変化に結合が認められ、老人斑には結合しなかった。ピック病、CBDのタウ病変には結合しなかった。これらのことから、Shiga-T12はADの神経原線維変化に最も特異性が高いと思われ、プローブの母核としてタウイメージングに有用であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までに合成した化合物の中からタウ結合能を有すると推測される化合物のうち、免疫組織化学的に異常リン酸化タウ蛋白凝集体と結合する化合物とタウオリゴマーにも結合する可能性のある化合物の候補を選んだ。この中から水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定装置を用いたin vitroアッセイでタウオリゴマーと結合する可能性のある化合物をさらにスクリーニングし、候補化合物を探索する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、結合部分の構造の検討とともに、タウオリゴマーにも結合する可能性のある化合物の候補を選んでいく。その方法として、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定装置を用いたin vitroアッセイでタウオリゴマーと結合する可能性のある化合物をスクリーニングし、候補化合物を探索する。また、このほかタウイメージング試薬として報告されているPETリガンドを参考にして、新しい化合物の合成も行い、同様にin vitroアッセイで確認する。最終的にモデルマウスで、タウの進展と結合の様式を探索していく予定である。
|