研究課題
本年度は、今までに合成した化合物の中からタウ結合能を有すると推測される化合物のうち、前年度にアルツハイマー病ヒト組織切片で組織化学的に異常リン酸化タウ蛋白凝集体と結合したと考えられたものについて、タウのオリゴマーおよびフィブリルのどちらに結合しやすいかを水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定装置を用いたin vitroアッセイで検討した。水晶発振子マイクロバランス法は、水晶発振子の金属薄膜上にタウタンパク質を固定し、その表面に化合物が吸着するとその質量に応じて、共鳴振動数が減少することから、タウタンパク質に対する化合物の結合量を調べることができる。まず、タウタンパク質として、リコンビナントヒトTAU441を原料にタウオリゴマーおよびタウフィブリルの作成方法を検討した。タウモノマーからのタウオリゴマーおよびタウフィブリルへの生成条件を、添加物や反応温度等の面から検討した後、作成したタウオリゴマーおよびタウフィブリルと化合物との結合をQCM法で評価した。具体的には、ジメチルスルホキシド中に溶解した化合物を、水晶発振子上のタウオリゴマーあるいはタウフィブリルとリン酸緩衝食塩水中で結合させ、結合量を求めた。タウフィブリルとの結合はチオフラビンTとの結合を参考にした。また、タウオリゴマーに結合する可能性のある化合物の候補はタウフィブリルとの結合比率も参考にし評価した。その結果、ST12化合物はタウオリゴマーとタウフィブリルの両方に結合した。ST12化合物を変異タウ遺伝子改変モデルマウスに投与した。マウスで蓄積しているタウとの結合を確認中である。
3: やや遅れている
変異タウ遺伝子改変モデルマウスへの化合物投与が進んでいない。
イメージング試薬として報告されているPETリガンドを参考にして、新しい化合物の合成も行い、同様にin vitroアッセイで確認する。最終的にモデルマウスで、タウの進展と結合の様式を探索していく予定である。フッ素MR画像法の特色を活かしてタウオリゴマーをin vivoで可視化する世界初の技術を開発するとともに、多重フッ素MR画像法を用いてタウオリゴマーとタウ蛋白凝集体を同時画像化し、変異タウ遺伝子改変モデルマウスを用いて、タウオパチーの発症メカニズムを解明する。
当該年度はコロナ禍で旅費が使えなかった。
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Biomaterials
巻: 270 ページ: 120686
10.1016/j.biomaterials.2021.120686