研究課題/領域番号 |
19K20672
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石田 駿一 神戸大学, 工学研究科, 助教 (80824169)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 計算バイオメカニクス / 消化器系バイオメカニクス / 計算力学 / 嚥下 / 嚥下障害 |
研究実績の概要 |
本年度は正常嚥下モデルの改良および嚥下障害モデルの構築を行った. 舌運動,咽頭収縮運動を改良し,従来モデルよりも正常嚥下の再現性の高いモデルの構築に取り組んだ.数値シミュレーションで得られた食塊運動を医用画像のものと比較し,食塊先端位置の時間変化がよく一致していることを確認した. 通常の嚥下では食物の物性に応じて嚥下動作を変化させる咽頭適応が起こっているが,様々な食物や姿勢での嚥下を可能とするためには,咽頭適応が無くてもある程度の範囲の物性,姿勢での安定な嚥下が可能となっていると考えられる.これを正常嚥下の冗長性と定義し,改良したモデルを用いて正常嚥下の冗長性を解析した.食塊粘度,嚥下姿勢を変化させた解析を,正常嚥下モデルおよび咽頭収縮が低下した嚥下障害モデルについて行った.正常嚥下モデルにおいては,粘度0.01Pa・sから1.0Pa・sの範囲の液状食塊を,後傾60度から前傾30度の範囲の姿勢で安定に嚥下することが可能であることを示した.咽頭収縮が低下したモデルでは,粘度の高い食塊において嚥下することができず,安定な嚥下のためには咽頭収縮による咽頭圧が重要であることが示唆された.これらの成果をまとめた論文を現在投稿中である(Fukushima et al., submitted). さらに,喉頭蓋運動の遅延による嚥下障害モデルを構築し,解析に着手した.喉頭蓋運動が遅延することで,特に低粘度食塊で誤嚥が生じやすくなることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
医用画像をよく再現する正常嚥下モデルを構築することができたため.さらに,安定な嚥下が可能な範囲を数値シミュレーションを用いて明らかにし,正常嚥下における咽頭圧の重要性を明らかにすることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
現在着手を始めている喉頭蓋運動異常など,様々な嚥下障害における解析を行う. 結果をまとめるにあたって機械学習を活用した整理を検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はコロナ禍の影響で出張や参加予定の学会の大部分が無くなったため. データ解析用に新たに高性能ワークステーションが必要となったため,その購入を予定している.
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