研究課題
本研究の目的は、脊椎脊髄疾患のシミュレーションの不足要因である、脊椎脊髄周囲組織の物理学的性質を解析し、そのデータを使用しつつ、実際の患者の医用画像から効率的かつ精確なモデル作成することである。その為に実際に受診した患者の画像データからモデルを作成し、個々の患者の性別、体格や年齢などを考慮した手術前後の変化に関するシミュレーションシステムを構築する。解析シミュレーションと実際の臨床が合致するか?合致しない場合にどの点を考慮(筋肉、組織強度など)を検証する。脊椎脊髄は筋骨格系領域でも非常に小さく複数組織に分かれているため、このシミュレーション手法は四肢の解析にも応用可能である。組織のデータに関しては、ヒトの術中に採取した不要組織や動物の組織を採取して、シミュレーションソフトに合う構成式を明らかにして入力する。モデル作成には多大な時間を要するため、人工知能に画像の部位ごとの作成方法を学習させ、短時間でのモデル作成を目指す。これらの研究結果は、入院患者の術前の最適な術式の構築する一助となり、最適な医療の提供による患者の健康な社会生活維持ひいては再手術の減少、入院期間の短縮、医療費の削減に貢献しうる。さらに、本手法で得た解析手法とデータは、医療分野では新しい医療機器の開発前のシミュレーションシステム開発にも活かしうる。また、安全な乗り物の作成や日用品の作成などの産業分野に応用することでできうる。
2: おおむね順調に進展している
本研究は神経学的な多数の症例と、医工獣連携により、ヒト・動物の組織による物理学的実験とシミュレーションを組み合わせる非常にユニークな医工学的研究で、様々な年代、身体強度に対し手術パターンを作成、検証しうる。その結果、以下の医学的・社会的創造性が生まれる。Ⅰ.各症例に対し最小限の術式の選択ができ、術後の予後を改善し、再発を防止できる。Ⅱ.患者のQOLを向上させ、医療費の低減にも寄与し、社会福祉にも大きく貢献できる。Ⅲ.産業分野で様々な乗り物の安全システムを構築する際、至適な位置や形状も解析できる。現在上記Ⅰ、Ⅱに関しては鋭意結果を積み重ね、論文投稿の準備も進めている。今回の研究期間内またそれ以前に今回の研究に必要と考えていたヒトのすべての組織の研究や動物実験を行う過程において取り組んでいた、ご遺体を用いた手術手技トレーニングを稼動する仕事に携わることができた。現在山口大学医学部附属病院医療人育成支援センター Clinical Cadaver Surgical Training部門として神経解剖学 教授 篠田晃の協力・指導の下運用に携わることができた。また消化器腫瘍外科と獣医学部で話が進められていた生体ブタを用いた手術手技トレーニングも整形外科で開催することができ、その解剖の実習も行い、組織実験も行うことができた。
ご遺体を用いた手術トレーニングと生体ブタを獣医学部と取り扱うことができるようになったこと、これに臨床研究と工学的な解析が可能な国内でもまれな研究体制となったことで国内でも数少ない施設となり、このシステムを発展させ、生体医工学の研究を充実させる。同時に様々な医用画像からシミュレーションモデルを作成できるようになっており、脊椎脊髄の解析を発展させつつ、ヒトの全骨格シミュレーションが解析できるようになる。この過程でできた画像は、そのまま医用機器開発のシミュレーションにも使用可能であるため、産学連携にも取り組んでいく。
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