本研究課題では神経細胞移植によるアルツハーマー型認知症の認知機能改善機構の解明を目指した。疾患モデルマウスへの神経細胞移植における認知機能改善と精神神経系症状の関連解析を試みた結果、神経細胞の移植は空間学習能および空間参照記憶能の改善に加えて、不安やうつ行動を改善することを見出した。興味深いことに、空間学習能の改善は精神神経系症状の改善と相関があったが、空間参照記憶能の改善は精神神経系症状の改善と相関が認められなかった。移植した神経細胞は産生する神経伝達物質に依存して異なる領域に分布していた。これらより神経細胞移植による認知症の改善は異なる作用機序によってもたらされることが明らかとなった。
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