研究課題/領域番号 |
19K20684
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
角井 泰之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 防衛医学研究センター 生体情報・治療システム研究部門, 助教 (30806451)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 三次元培養皮膚 / 皮膚移植 / 細胞分化 / Photobiomodulation / 拡散反射分光 |
研究実績の概要 |
1.三次元培養皮膚の分化制御の検討 三次元培養皮膚モデルは耐感染性の高い新しい移植皮膚として有望である.しかし必要な構造や機能が備わるまでには長い培養期間(分化誘導期間)を要するため,その短縮化が求められている.本研究では,光による生体調節作用(photobiomodulation, PBM)を応用し,同皮膚の分化を制御できないか検討を行った.PBMはミトコンドリア電子伝達系のシトクロムc オキシダーゼの光吸収が起点となるため,その吸収波長に合わせた中心波長440 nm,523 nm,658 nm,823 nmのLEDアレイを用い,効果を比較した.分化誘導開始翌日から4日間,1日に1回光を照射し(50 J/cm2),さらにその翌日に表皮角化細胞の後期段階の分化マーカーであるフィラグリンの発現量を測定した.その結果,658 nm光と823 nm光照射群において非光照射群に比べ高い値が得られた.これら波長の光は組織深達長が比較的大きいため,皮膚全体でPBMの効果が得られた可能性が考えられる. 2.三次元培養皮膚の分化状態評価の検討 三次元培養皮膚の分化速度は培養環境や操作等のわずかな違いによっても変化し得るため,移植に用いる皮膚の分化状態をその場で非破壊的に検査することが望ましい.本研究では,組織を構成する細胞や分子の波長依存的な吸収・散乱特性を測定可能な拡散反射分光法を応用できないか検討を行った.分化誘導期間中の皮膚に広帯域なハロゲンランプ光を照射し,その散乱光強度を経日的に測定した.その結果,分化誘導開始後より散乱光強度は増大し,3日後には初日の約2倍に達した.同期間中の培養皮膚の組織学的検査(破壊検査)結果より,3日間で表皮角化細胞の多くが分化により顆粒化していたことが確認された.以上より,本法を用いて表皮角化細胞の分化に伴う形態変化を非破壊的に評価できる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PBMの効果に波長,照度,照射時間,適用回数,間隔など多数のパラメーターが影響を与えることがわかり,条件の検討に当初の想定以上の時間を必要としている.
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今後の研究の推進方策 |
1.三次元培養皮膚の分化制御の検討 今年度の成果をもとに,658 nm光および823 nm光の有効性についてサンプル数を増やして検証を行うとともに,照射時間や照度などの条件の最適化も図る.そして分化の促進により短縮できる培養期間や得られる皮膚バリア機能を評価し,本法が同培養皮膚の移植のためにどの程度有用に働くのかを明らかにする. 2.三次元培養皮膚の分化状態評価の検討 拡散反射分光法の有用性をより長い培養期間で評価する.特に表皮角化細胞の最終分化による角質層の形成はバリア機能獲得のために極めて重要であるため,これを非破壊的に評価できれば非常に有用である.また拡散反射光スペクトルを解析し,各波長における吸収・散乱の情報をもとに,分化の進展に伴う細胞・分子の機能変化や量的変化を検出できないか検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞分化の制御のために有効な光照射条件の検討が当初予定よりも遅れているため,細胞分化を評価するための免疫組織化学染色やELISA (Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法に用いる試薬を予定数量購入できなかった.これらは次年度に購入する計画である.
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