研究課題/領域番号 |
19K20694
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
有坂 慶紀 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (70590115)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポリロタキサン / 超分子 / 歯周組織 / 物理バリア機能 |
研究実績の概要 |
歯科領域において歯肉炎および歯周炎は、歯周病に繋がる炎症疾患の一つである。本研究課題では、細胞-細胞間結合の強化を可能とするポリロタキサン足場の構築を目的とする。さらにポリロタキサンの構造特性(分子可動性)が歯肉上皮細胞の細胞間結合に関連するタンパク質の発現や物理バリア機能回復による歯肉炎抑制効果に及ぼす影響ついて解析する。2020年度は、分子可動性の異なるポリロタキサン表面上における上皮細胞株の形態やメカノセンサー分子の局在、細胞間の密着結合に関連した遺伝子発現について解析した。具体的には、α-シクロデキストリンの貫通数が異なるポリロタキサントリブロック共重合体を合成し、細胞培養用ポリスチレン製基板に被膜することでポリロタキサン表面を作製した。このポリロタキサン表面上に接着したマウス由来上皮細胞は、α-シクロデキストリン貫通数が多い表面ほど細胞伸展が促された。また細胞の形態はメカノセンサー分子の細胞内局在に影響を与えることが知られており、α-シクロデキストリンの貫通数が多い表面ほどメカノセンサー分子が細胞核に移行することが明らかとなった。さらにα-シクロデキストリン貫通数の少ない表面ほど細胞遊走が抑制されたり、細胞密着結合に関連する遺伝子発現が有意に亢進されたりすることがわかった。ポリロタキサンの分子可動性はα-シクロデキストリン貫通数に依存することから、細胞-細胞間密着結合をポリロタキサンの分子可動性によって制御できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、本研究課題のポリロタキサン表面の分子可動性が上皮細胞の形態、メカノセンサー分子の細胞内局在、細胞間密着結合関連遺伝子の発現に与える効果を見出した。おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ポリロタキサンを被膜した分解性高分子膜を作製する。作製したポリロタキサン高分子膜は、経時的に溶出試験および力学強度試験を行い、その分解時間について解析を行う。さらに、歯肉上皮組織の物理的バリアの回復と歯周炎抑制効果のin vivo解析を行う。歯肉炎モデルラットの口腔内にポリロタキサンフィルムを埋植し、細胞-細胞間の連結が歯周炎発症の抑制に与える影響を免疫染色した組織切片の観察と炎症性サイトカインの産生量から解析する。本実験で使用する実験動物や生物学的評価試薬などは計画的に購入する予定である。これらの一連の実験を通じてポリロタキサンの細胞操作機能による細胞間結合制御が歯周炎組織の治癒に与える効果について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、in vivo実験などを計画していたが、in vitro系での実験において想定していなかった細胞遊走挙動が観察された。関連して細胞間結合に関連する遺伝子にも興味深い発現が認められてた。そこで2020年度はin vitro系においてポリロタキサンの分子可動性が細胞-細胞間接着に与える効果の解明に重点的に取り組んだ。これにともないin vivo系での実験を2021年度に変更し、その分の費用を次年度使用額として計上した。
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