研究実績の概要 |
最終年度では、投与したmRNAから翻訳されるタンパク質の機能を、特定の細胞内タンパク質に応じて制御するシステムについての研究を進めた。具体的には、分割状態の細胞死誘導タンパク質をmRNAから翻訳させ、これを検知対象の細胞内タンパク質依存的に完全長へと再構成させることで、検知対象タンパク質を発現している細胞を選択的に死滅させるシステムを開発した。このシステムは、改良を重ねたことで、検知対象タンパク質非発現細胞における約100%の細胞生存率と、検知対象タンパク質発現細胞における約90%の死滅を両立させることが可能となった。なお、この研究成果については2023年1月に責任著者として論文発表済みである(K. Free, et al, Pharmaceutics 2023)。また、論文未発表ではあるが、この翻訳後制御システムが細胞死誘導タンパク質以外のタンパク質にも適用可能である点についても既に実証済みである。 上記のシステムは翻訳後の段階で制御するものであるため、2020年度に発表した光翻訳制御システム(H. Nakanishi, et al, Cell Chem. Biol. 2021; H. Nakanishi, et al, STAR Protoc. 2022)や、2021年度に発表した細胞内タンパク質応答翻訳制御システム(H. Nakanishi, et al, ACS Synth. Biol. 2022)とも組み合わせることが可能である。したがって、これらのシステムの組み合わせは、光と特定の細胞内タンパク質の双方や、複数の異なる細胞内タンパク質に応じた制御を可能にする技術と言える。 また、本研究で開発した上記のシステムについては、それぞれ特許も申請済みである(特願2021-139141 タンパク質の翻訳制御システム、特願2021-139166 生細胞の選別システム)。
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