骨疾患治療のための骨環境応答性ナノツールの開発

2020 年度 研究成果報告書

• 研究課題/領域番号: 19K20698
• 研究種目: 若手研究
• 配分区分: 基金
• 審査区分: 小区分90120:生体材料学関連
• 研究機関: 慶應義塾大学
• 研究代表者: 福井 有香 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (50635836)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: リポソーム / ナノカプセル / ドラッグデリバリーシステム / 骨粗鬆症

研究成果の概要

骨粗鬆症は、加齢とともに破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のバランス（リモデリング）が崩れて、骨密度と骨質の低下が誘発される疾患である。そこで、本研究では、生体膜由来のカプセル素材であるリポソームをプラットフォームとして、骨環境に応答して、骨吸収と骨形成の同時コントロールを可能にするカプセル（骨環境応答性ナノツール）の開発に取り組んだ。（１）破骨細胞周辺の酸性環境に応答して、表面が骨結合性から細胞内移行性へと変化し、薬剤を放出するカプセルの作製に成功した。また、（２）骨形成素材であるリン酸カルシウム結晶を複合化したカプセルの作製を達成した。

自由記述の分野

高分子化学

研究成果の学術的意義や社会的意義

骨粗鬆症の治療薬の中でもビスホスホネート製剤が、最も多く使用されている。一方、骨と強固に結合し、長期に渡って骨組織に残留するため、骨代謝回転を過度に抑制して、骨強度の低下による骨折、顎骨壊死などの重篤な副作用を引き起こすといわれている。本方法は、カプセルの体内動態制御(骨標的指向性)に加えて、細胞内動態制御(破骨細胞内での薬剤放出)を実現することで、薬剤を破骨細胞にだけ作用させることが可能となり、副作用の低減が期待できる。さらに、カプセルを用いて骨形成素材をデリバリーし、骨形成を誘発することによって、骨粗鬆症の予防、進行の遅延、早期治療効果の発現が期待できる。