本研究では癌細胞のアポトーシスを有効的に誘導する紫外波長域を明確にすることが大きな目的であり、効率良く調査を進めるため、紫外・可視光源および受光デバイスが集積したバイオチップの作製が必要である。本研究で作製するバイオチップは新材料であるアモルファスフッ素樹脂(CYTOP)を母材とし、主な構造および役割はバイオチップの中心に流路を形成し、流路壁の片面から波長280nm(紫外発光ダイオード:UV-LED)の紫外光を細胞に照射し、もう片面の流路壁に設けたスリット、回折格子および分光器で紫外光吸収を検出するものである。これまでの成果は次のように述べる。 ・アモルファスフッ素樹脂(CYTOP)の基板生成:アモルファスフッ素樹脂は液体状であるため、固体化し基板を作製する必要はある。様々な条件を試み、平坦でひずみの少ない基板(厚さ200μm)を安定して作製できるようになった。 ・バイオチップの作製:アモルファスフッ素樹脂基板(厚さ200μm)を3枚用意し、3次元微細加工が可能なフェムト秒レーザを用いて、流路(54.7μm×48.4μm)、スリット(98.3μm)および回折格子(14.7μm×7.9μm(ピッチ幅:30.9μm))の生成に成功した。バイオチップは各基板を回折格子、スリット、流路、フタ(CYTOP基板)を重ね合わせて、アクリル製の枠で固定した。細胞を注入するため、アクリル枠には1000μmの穴をあけ、10μLピペットチップが刺せるようにした。また、光源および分光器の光ファイバーを固定して、バイオチップを作製した。 ・バイオチップの評価:本研究では作製したバイオチップを評価するため、急性骨髄性白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、慢性骨髄性白血病細胞の3種類のヒト白血病細胞を用いて、紫外光の光吸収を測定した。その結果、僅かであるが、細胞の種類によって光吸収が異なることが分かった。
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