研究課題
高齢化の急激な進行とともに、心房細動の患者数は急増しており、その患者数がまもなく100万人を超えると予想されている。心房細動例では洞調律例と比較して心不全のリスクが3倍、脳梗塞のリスクが5倍高いことが知られており、その予防や発症メカニズムの解明が重要な課題である。糖尿病は心房細動の独立した危険因子である。これまでの基礎研究において、耐糖能異常を含めた糖代謝異常は炎症や活性酸素の産生などを介して心筋の繊維化を惹起することが示されてきている。また近年の臨床研究では、糖尿病を含めた心血管リスク因子の積極的なコントロールが心房細動のカテーテル治療後の再発を減らすことが示された。責任研究者らは昨年、心房細動と強く関連する左房機能低下が、加齢による心機能低下として最も初期に起こることをアメリカ心臓病学会で発表しJACC誌(IF 19点)に掲載された。さらに、動脈スティフネスが左房機能に与える影響を検討し、ヨーロッパ心臓病学会のシンポジウムで発表、こちらはヨーロッパ高血圧学会誌(J Hypertens誌 IF 4点)に報告した。本研究は、これまでの研究をもとに1)心房細動例における耐糖能異常を含めた糖代謝異常の有病率、2)糖代謝異常と左房機能との関連、3)糖代謝異常が心房細動アブレーション治療後の左房機能や再発に与える影響を明らかにし、心房細動の発症ならびに再発予防を目指すものである。昨年に当該研究は当院の倫理委員会の審査を通過し、症例の集積を開始した。これまでに約80例の症例の登録が完了しており、引き続き症例の登録を継続する。
2: おおむね順調に進展している
研究課題は予定通りに進んでおり、現在大きな問題は無いと考えている。しかしCOVID-19の影響により今後症例登録に遅れが生じる可能性がある。
目標症例数を目指して引き続き症例登録を続ける。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Journal of the American College of Cardiology
巻: 74 ページ: 1789~1800
doi: 10.1016/j.jacc.2019.07.080