本研究計画では、撮像装置や撮像時期の異なる生体画像の画像間のわずかな見た目の違いを変換して合わせる手法を開発し、医師による読影を支援する技術の開発を目的としている。多くの病院で非侵襲的に生体内を観察できるMRI装置による画像診断が導入されているが、MRI装置は病院ごとにメーカーや特性が異なり、また一つの病院内で複数の装置を導入している場合もある。撮像装置が異なると、同様の撮像シーケンスで撮った画像でも、コントラストや色味や滑らかさといった画像の見た目がわずかに異なるため、医師の読影ストレスの増加を引き起こしている。そこでこの画像の見た目を均質にし、読影をサポートする技術の開発が望まれている。 本研究課題を通して、2種類のMRI装置により取得した多数の画像から、機械学習により画像の見た目を合わせる変換技術を開発した。画像の見た目変換の手法には、2つの画像グループに対応が無い場合の学習に適した教師無し学習の一つである敵対的生成ネットワークを応用した。さらに、データに潜む本質的に重要な要素を見つけ出すスパース推定に基づいて、見た目の違いに関係する重要な要素を抽出するプログラムの開発に取り組んだ。また、画像の見た目変換においてMRI画像を小さいパッチに分割することなく撮像スライス全体で変換する方法へと改良を行うことにより、画像内での部位ごとに特有の画像の特徴を効果的に変換することが可能となった。本研究課題により開発したMRI画像の見た目変換に関わる技術は、MRI画像による病気の早期発見に繋がる臨床応用への重要な基盤技術となる。本研究を継続していくことで、これまでには見落とされる可能性のあった初期の病変を発見するために医師の読影を実際に臨床現場でサポートするシステム構築へとさらなる発展が期待できる。
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