研究課題/領域番号 |
19K20720
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
冨田 陵子 福岡大学, 薬学部, 助教 (10580194)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アミノ酸メタボロミクス / 悪性中皮腫 / HPLC分析 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
悪性胸膜中皮腫(MPM;malignant pleural mesothelioma)は、可能な限り早期に発見して治療を行うことが最良の策であるものの、患者自身が自覚できる特徴的な症状は殆どなく、早期発見の機会を逃すことが多い。そのため、早期発見に有効で標準化された診断技術の構築が現在の課題である。申請者はこれまでに、がん細胞培養培地中の約20種アミノ酸濃度についてトータルバランスの変動に基づく総合的指標を作成し、細胞の状態を評価する手法「アミノ酸メタボロミクス」を開発した。本研究では本法を応用し、生体内(血液や胸水中)アミノ酸のトータルバランスの変動解析をもとにMPMの診断や他疾患との鑑別を可能とする統計的指標の作成を目的としている。 今年度は、まずin vitroにて本法の有用性を検証すべく、MPM由来細胞株(CRL2081、CRL5915、CRL5946、MESO-1、MESO-4)と対照である中皮細胞株(Met-5A)の培養培地中のアミノ酸についてLC-蛍光分析を行い、得られたアミノ酸濃度について統計解析ソフトウェアを用いてトータルバランスの変動を多変量解析した。その結果、MPM細胞およびMet-5A細胞の生存や増殖に要求されるアミノ酸バランスはそれぞれ異なっており、特にアルギニンやオルニチンを中間代謝物とする「尿素回路」が関与する代謝系に差を生じていることが示唆された。その結果より、本研究で提唱する「アミノ酸濃度のトータルバランスの変動から疾病状態を評価する指標」の作成は有用なアプローチであると考えられる。標準的な指標としての応用を目指し、適切な統計解析手法についても更なる検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、in vitroにおける検証は概ね終了しており、次段階である臨床検体(MPM患者から採取した胸水)の分析および解析へと着手している。
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今後の研究の推進方策 |
出来る限り多くの臨床検体(MPM患者から採取した胸水)の分析および解析を行い、トータルバランスの変動に基づいた総合的指標の作成を試みる。
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