研究課題/領域番号 |
19K20722
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
前田 祐作 香川高等専門学校, 機械工学科, 助教 (00803404)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 低侵襲治療 / 軟性内視鏡 / NOTES / 触覚センサ / 構造色 |
研究実績の概要 |
軟性内視鏡を用いた超低侵襲治療技術であるNOTES技術の進歩に向けて,発見した「病変の正確な診断」や,鉗子の扱いなどの「治療技術の習熟」の解決に向けて,病変の硬さ検出や,把持状態の把握が可能なセンサを,一切の配線や電源供給を不要とする “構造色変化に基づく計測”により,硬さや把持状態が検出可能なセンサ要素を開発し,必要に応じて硬さや把持状態の計測・判定を,送気圧などの計測と同時に可能とするシステムの実現を目指した研究を推進している。 令和元年度は,構造色変化に基づいたMEMSセンサ要素の開発および,生体内環境での安定動作に向けた耐性評価,およびその補償手法の検討を進めた。センサ要素開発においては,内視鏡カメラの映像から,荷重および対象の硬さを取得可能な素子を医療用鉗子や,内視鏡カバーであるフードに実装可能であり,治療そのものを阻害しない,2mm角のサイズで実現している。 一方,生体内環境での安定動作に向けた耐性評価,およびその補償手法の検討においては,センサの想定される使用環境である,生体消化器内を想定し,粘液による特性変化や,周辺の環境光変化に関する安定性の検証および改善を進めた。センサへの入射光は光源からの光が,周辺の臓器により反射されたものであり,この影響を補償する必要がある。計画に従い,センサチップの構造色を有していない部分の色を基準として,ホワイトバランスを調整することでの補償効果を検証した。さらに,消化液を初めとした粘液による機械特性変化が,使用上問題になる範囲で生じないことも確認し,周辺環境に依存しない安定した構造色の検出に向けた成果を得た。 ここまでの成果をもとに, 3軸荷重の位置分布を検出可能なセンサをアレイ上に実装することによる,把持状態の評価や,生態環境を模擬した環境での耐性評価を取り入れ,実用化を目指した研究へと展開していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題において2年間で開発するセンシング技術は,硬さや,把持状態といった,取得する情報に対して変化する構造色を有するセンサ要素と,内視鏡視野に複数存在する各センサの構造色を抽出し,対象情報へと変換する,アルゴリズムの2要素で構成される。 開始1年目である令和元年度においては,各センサ要素の基礎となる,触覚センサを開発し,荷重計測実験において,応用に必要な十分な計測範囲,分解能を有することが実証されている。この成果は,今後の硬さや,把持状態など,荷重の計測を基本として計測される情報の取得に対する重要な成果であるといえる。また,実際の使用環境を想定した,素子の耐性評価や,アルゴリズムの検討については,粘液付着時の特性変化や,環境光変化に対する補償アルゴリズムを開発している。よって,NOTES技術の進歩を工学技術から支援することを目指した計測システムの実現計画は,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和2年度は,実証実験に向け,センサを鉗子へ実装した状態での硬さおよび,把持状態検出の実証を目指す。これまでに開発してきたセンサ要素から得られた知見をフィードバックした,各センサ要素を開発し,医療用鉗子へ実装を行う。接触荷重に対する依存性を極限まで小さくしたセンサ構造により,軽く触れた状態から,強く把持した状態まで,接触の状態を問わない硬さ検出の実現を目指す。また,実装を行った鉗子を用いて,模擬臓器を把持した際に得られる把持荷重の分布データから,把持状態の良/不良を判定する手法を模索していく。 加えて,取得した情報をリアルタイムで表示できるソフトウェアの開発も行っていく。実際の使用時に,視野内に複数,位置が固定されていない状態で配置されるセンサの構造色から,把持における荷重や,接触箇所の硬さについての各情報を抽出し,表示可能なシステムを実現する。最終的には,実現したシステムの有効性を,実際の動物臓器内での動作実験により検証を目指す。
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