軟性内視鏡を用いた低侵襲治療において,医師が視覚情報しか得られないことに起因する,病変の正確な診断が困難である事や,鉗子の扱いなどをはじめとする,治療技術の習熟が困難である事が課題として存在している。本研究では,これらの課題の解決手段として,取得する情報に応じて変化するセンサ素子が呈する構造色を内視鏡既存のカメラで取得する,“構造色式センサ”により,病変の硬さ検出や把持状態の把握が可能なセンサ要素,およびそれらを同時取得可能な計測システムの実現を目指し,1.センサ素子の開発,2.センサとカメラ間の角度や入射光変化に対する補償,3,生体内環境での動作検証をそれぞれ実施した。 1.センサ素子の開発:2mm角程度のセンサチップ以外の一切を不要として,医師が必要とする複数の情報を同時取得可能な計測手法を提案し,実際に,生体に相当するA5およびA45の硬さを識別可能なセンサ要素や,鉗子の把持時に生じる,把持力および摩擦力に相当する,3軸荷重を検出可能であることを実証した。 2.センサへの入射光変化に対する補償:本研究の計測手法では,センサが呈する構造色をカメラで取得するため,センサへの入射光強度分布により,カメラで観察されるRGB値の比率が変化する。この補償として,センサの構造色を呈さない部分を基準色として,RGB値を補正することで,環境光変化を補償した。 3,生体内環境での動作検証:センサが動作する生体内環境では,胃液をはじめとする粘液の付着による,センサの機械特性変化が懸念される,この環境を模擬し,生体内粘液よりも年生の高いグリセリン内で問題なくセンサが動作することを実証した。
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