研究課題
核医学画像診断装置であるPET (positron emission tomography: 陽電子断層撮影法)は、511 keV対消滅ガンマ線しか測定できないため、生体の複数の機能を同時に画像化することはできない。そこで本研究では、広範囲のエネルギーの放射線を同時に撮像できる、コンプトンカメラの機能を追加したPET検出器の開発を進めている。本年度は、コンプトンカメラの吸収体として超高エネルギー分解能PET検出器の開発を行った。アルミケーシングが施された50×50×30 mm3のサンゴバン製LaBr3: Ceモノリシックシンチレータを浜松ホトニクス製64 chマルチアノード光電子増倍管に光学結合し、片面読み出し方式の検出器を製作した。更に抵抗チェーン回路を用いて読み出し信号数を 64 から 4 チャンネルに削減した。また Python の Keras ライブラリを用いて測定データの深層学習を行い、位置精度の向上を試みた。Cs-137線源を 1 mm 径でコリメートし、結晶上面から結晶の 4 分の 1の領域において、1 mm ピッチで照射した。エネルギー分解能は 662 keV に対して約4~5%であった。位置分解能については、結晶の中心付近では約 6 mm であったが、辺縁部に進むほど劣化した。辺縁部では 4 チャンネルの出力信号にあまり違いが生まれないため、位置精度が劣化すると考えられた。コリメート照射したデータに対して深層学習を適用したところ、位置精度は約5.4mmに改善した。信号数を削減しても深層学習による位置精度改善が見込まれた。
2: おおむね順調に進展している
本研究で考案中の検出器構造に関して、初年度で予定していた実験が概ね完了したため。
コンプトンカメラの吸収検出器に加え、散乱検出器についても開発を行う。特にエネルギー分解能を向上させるため、シンチレータと受光素子の構造や組み合わせ・シンチレーション光の広がり方の観点から検討を行う。
購入を予定していた実験機器の一部が、所属ラボ所有のもので代用可能である見込みが立ったため。その分を追加の検出器材料の購入に充てることにした。
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https://www.nirs.qst.go.jp/usr/medical-imaging/ja/study/main.html