研究課題
核医学画像診断装置であるPET (positron emission tomography)は、511 keV対消滅光子しか測定できないため、生体の複数の機能を同時に画像化することはできない。そこで本研究では、広範囲のエネルギーの放射線を同時に撮像できる、コンプトンカメラの機能を追加したPET検出器の開発を進めている。本年度は、コンプトンカメラの散乱体として使う高エネルギー分解能シンチレーション検出器を開発し、画像化実験を行った。2.9×2.9×7.5 mm3のGSOシンチレータ結晶を1層目7×7、2層目8×8配列で光学結合し、2層構造のGSO結晶ブロックを製作した。この結晶ブロックを3 mm角8×8チャンネルの浜松ホトニクス製multi-pixel photon counter (MPPC)アレイモジュールに結合した。検出器のエネルギー分解能を実測したところ、81 keVで23.5%、141 keVで14.7%、202 keVで12.7%、307 keVで11.2%、511 keVで10.4%、662 keVで10.1%と良好なエネルギー分解能値が得られた。この検出器と、所属ラボの別プロジェクトで開発されたPET検出器(同じサイズのGSO結晶を16×16×4層構造に配列したPET検出器)を吸収体として用いることで、コンプトンカメラ試作機を構成した。Ba-133(主に81 keVと356 keV)、Na-22(511 keVと1275 keV)およびCs-137(662 keV)の3つの点線源を散乱検出器から5 cmの距離に重ねて置き、コンプトンカメラとしての測定を行った。上記エネルギーに相当するウインドウを各々設定し、コンプトンカメラ画像再構成を行った。結果は、Ba-133点線源は画像化出来なかったが、511 keV, 1275 keV, 662 keVの3つのガンマ線を区別して画像化することが出来た。多核種同時撮像が可能なコンプトンカメラ機能を持つPET検出器の開発に成功した。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 990 ページ: 164998~164998
10.1016/j.nima.2020.164998
https://www.nirs.qst.go.jp/usr/medical-imaging/ja/study/main.html