研究課題/領域番号 |
19K20725
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高木 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (20771885)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波治療 / 超音波診断 / 音響キャビテーション / 生体ファントム |
研究実績の概要 |
本研究の目的である、超音波治療中のキャビテーション気泡の特性を可視化するための新規信号処理法を提案し、その有効性を検討した。超音波治療中に診断用超音波プローブで受信された超音波信号の変化や特性に着目することで、治療中のキャビテーション気泡の振動状況の激しさ、振動方向、非線形性等を可視化できることが示唆された。本手法を適用することで、超音波治療中の生体内の新しい情報(特にキャビテーションの挙動)を可視化できる可能性が示唆された。本手法は、これまで知り得なかった、超音波治療中の音響キャビテーション気泡の挙動(振動状況や非線形性)の可視化を可能にする発見であり、画期的な手法である。本年度の計画は、超音波治療イメージングの新規信号処理手法を提案し、in vitro実験で実証する計画だったため、おおむね計画通りに研究を進めることができた。本内容に関しては、国内学会1報、国際誌2報にて報告を行っている。 本研究のもう一つの目的である、超音波治療中の治療領域(たんぱく凝固領域)と音響キャビテーション領域を分別する手法の開発のために、生体を模擬するファントムを作成し超音波照射実験を行っている。治療領域を簡易的に色の変化で可視化する新規生体ファントムを開発し、その有効性を検討した。本ファントムにおいて、超音波治療時の治療領域の可視化領域の実験値とシミュレーション値の比較も行い、ほぼ一致したことから、治療領域を可視化する手法として有効であることが示唆された。治療領域を簡便に可視化できる手法は、これまで提案されたものはなく、本研究の大目的の中核を成す、重要な成果であると考えている。本内容に関しては、国際誌1報を執筆中であり、国際学会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度まで遅れていた、超音波治療デバイスを完成させ、順調に超音波治療実験、および、超音波イメージング実験を行うことができた。さらに、超音波治療時における、新しい音響キャビテーション気泡イメージングを提案できた。本内容を超音波工学分野で世界的に評価の高い国際誌含む、国際誌2報にて報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、新規に開発した、超音波治療領域可視化用生体ファントムにて、音響キャビテーション気泡を生成し、治療領域と音響キャビテーション領域を分別する手法を検討していく予定ある。現在、考えられ得る課題としては、超音波イメージングを可能にするため、生体と同様の超音波散乱体(ガラスビーズ等で代用予定)を生体ファントムに封入する必要がある。超音波散乱体の種類や量が、音響キャビテーション気泡の生体内での起こり方や治療領域の可視化範囲に影響を与える可能性があるため。散乱体の種類や量をパラメータとして細かに振りながら、最適条件を見つけながら、実験を推進していく予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、参加を計画していた国際学会が新型コロナ感染症の影響により、中止になったため、計上していた旅費(国際学会)の分が来年度に持ち越しになった。また、超音波治療デバイス開発の費用が想定より低く、改良の余地もあったことから、来年度、デバイス改良・開発のための費用として、使用予定である。
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