本研究では、超音波がん治療時に生じる音響キャビテーション気泡からの音響信号変化に着目し、超音波治療領域を検出する技術に関する研究を行った。従来は、超音波治療中の組織に音響キャビテーション気泡が生じた場合、その発生領域が治療領域に重なってしまい、治療領域の検出が困難になる。本研究では、治療用超音波信号と音響キャビテーション気泡からの反射波の相互作用に着目した、独自のアルゴリズムを考案し、音響キャビテーション気泡が生じた場合でも、治療領域の検出が可能になる技術と治療システムを開発した。 本研究によって、従来困難であった超音波治療領域検出が可能になったことから、超音波治療の手術部位・適応疾患の大幅な拡大につながることが期待できる。また、本手法は、現在、市場で普及している超音波診断装置を用いることが可能であることから、比較的、安価に、小規模クリニック等でも超音波がん治療を行えることに繋がり、今後懸念される医療費増大の歯止めとしても寄与できる技術だと考えられる。 本研究では、本課題1、2年目に、治療用超音波デバイスを設計し、超音波診断装置により、超音波治療を様々な疾患に自在に行えるシステム開発と治療部位とキャビテーション気泡からの超音波信号の相互作用により、治療領域を検出するアルゴリズム開発を行った。最終年度は、1,2年目の成果を基に、治療システムへ実装し、実際の組織(豚)でも適用できることを明らかにした。 また、最終年度は、特に超音波治療部位の温度上昇とキャビテーション気泡の発生状況の関係を明らかにするために、超音波治療による温度上昇を可視化できる生体ファントムの開発を行った。独自開発した生体ファントムと実際の治療領域の関係を明らかにすることで、本課題の最終目標である、「治療領域検出技術」の正確性を確認することができた。
|