研究実績の概要 |
本研究では,① 両眼視を成立させた日常生活に近い環境下で眼球運動を短時間かつ他覚的に測定できる試験システムを新たに開発し,被験者の眼球運動を可視化および数値化する.また,画像特徴量の検出に優れた人工知能技術「ディープラーニング」を導入することで,従来法では診断が困難であった眼球運動障害を診断可能になると思われる.そこで、② 人工知能技術「ディープラーニング」を用いた,眼球運動の障害部位や疾患を推定するプログラムを開発し診断および治療に役立てることを目的とする. 本研究の三年次である2021年度は昨年度開発したアイトラッカー (VOG) と物体検出ディープラーニング (SSD) を組み合わせた眼球運動システム (VOG-SSD システム) を完成させ,眼球運動を他覚的定量評価できることを国際誌 (Hirota et al., Transl Vis Scie Technol, 2021) において公表した.さらに,検査-解析-評価のシームレス化を目指し,VOG-SSDシステムによって測定した視標と眼位情報から,眼球運動の潜時やゲイン (視標の動きに対する眼球の追従率) を自動計算する解析ソフトウエアを開発した.眼科臨床では,視標を呈示する順番が検者間で異なるため,実空間で検者がランダムな順序で視標を呈示しても自動解析できるアルゴリズムを実装し,健常者および患者の測定において,視標の呈示方向は100%正解することを確認した. 健常者の潜時やゲインは先行研究と同等の値になったことから,斜視を初めとした眼球運動障害の自動解析が実施できる可能性が高い.現在,斜視患者をリクルートして眼球運動障害の程度判定に有効であるかを検討している.
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