研究課題/領域番号 |
19K20729
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北野 貴也 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70772193)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血栓回収 / 脳卒中 / 人工心臓 / 病理 / 血栓 / 塞栓 / LVAD |
研究実績の概要 |
左室補助人工心臓(LVAD)の開発により重症心不全患者の予後は改善し、LVAD装着患者数は増加の一途にある一方で、深刻な合併症である脳梗塞の増加が喫緊の課題となっている。経皮経管的脳血栓回収術は超急性期脳梗塞に対して有効性が証明され、LVAD装着中の患者でも有効な治療法と期待されている。しかし、LVAD装着例では強力な抗凝固療法が行われていることや、人工心臓に関連して血栓が形成されることなどの特殊性があるため、同様に血栓回収術が有効なのかは不明であった。そこで、LVAD装着患者と通常の脳梗塞患者に対する脳血栓回収術について、症例対照研究を用いて比較し、LVAD装着における脳血栓回収術の有効性と安全性について検証した。55件(52症例)の血栓回収術が施行されており、本研究ではLVAD群10件(8症例)、対照群27件(27症例)の脳血栓回収術を対象とした。LVAD群では再開通までに要したデバイスの使用回数が多かった。また、LVAD群では、無症候性くも膜下出血が多かった。血栓はLVAD群で6標本、対照群で14標本を評価した。LVAD群では対照群に比してRBCの割合が少なく、Plt・Fbの割合が多かった。 本研究により、LVAD装着患者においても脳血栓回収術は閉塞血管の再開通に有効である一方で、LVAD群では再開通までに要したデバイスの使用回数が多く、頭蓋内出血の頻度が多い傾向にあることが明らかになった。LVAD装着患者における脳血栓回収術の安全性については更なる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例の集積は予定数より若干少ないものの、解析についてはおおむね予定通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
左室補助人工心臓に関連して形成される血栓は、経皮的脳血栓回収術に抵抗性であることが明らかになった。現在、なぜそのような違いが生じるのかについて、より詳細に病理学的な検討を行っている。特徴的な所見が見いだされた場合、それが左室補助人工心臓関連血栓に特異的なものなのかどうかを検証する予定である。もし一般化可能なものであれば、血栓性状が経皮的脳血栓回収術に与える影響についてより詳細に検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主として研究のために必要な試料収集および基本的な解析を行った。次年度以降、より詳細な資料の評価(物理的特性や免疫組織学的評価)を予定しており、そのための物品購入に予算を充てる予定である。
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