左室補助人工心臓(LVAD)装着患者数は増加の一途にあり、深刻な合併症であるLVAD関連脳梗塞の治療が喫緊の課題となっている。近年急速に発展した経皮経管的脳血栓回収術は超急性期脳梗塞に対して非常に有効な治療法であるが、LVAD装着中の患者は強力な抗血栓療法を受けており、塞栓源が特殊であるため、血栓回収術を安全に実施可能なのかは不明であった。 本研究は本邦においてLVAD 装着数の多い3施設の患者データを用いて症例対照研究を基盤 とする。まず、LVAD 装着中に脳血栓回収術を施行された症例を登録し、臨床情報を収集した。LVAD 装着群とコントロール群(脳血栓回収術を施行された非LVAD 装着患者)を比較し、有効性および安全性を確認した。さらに、合併症の実態を明らかにして関連する因子(LVADの状 態や術前検査結果、治療内容など)の検討を行った。回収された血栓について病理学的な検討を行い、LVAD 非装着患者の血栓と比較することで LVAD に関連した血栓の特殊性を検討した。 LVAD装着患者においても脳血栓回収術は超急性期脳梗塞の有効な治療法であることが本研究により明らかとなった。一方で、LVAD関連血栓は赤血球の割合が少なく治療に抵抗性であり、LVAD装着患者は術後の出血性合併症の頻度が高いため、留意が必要である。超急性期脳梗塞では、発症から再開通までの時間が予後に直結するため、時間短縮にむけて診療科間の連携をスムーズにすることが重要である。 また、発展的研究として、血栓が形成されてから時間が経って成熟することが血栓の再開通療法への抵抗性に関与していることを明らかにした。
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