研究課題/領域番号 |
19K20740
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山雄 さやか 近畿大学, 医学部, 助教 (00838328)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 変視症 / 変視量 / M-CHARTS / 加齢黄斑変性 / 網膜形態異常 / 簡易スクリーニング検査 / セルフチェック |
研究実績の概要 |
加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)で必発する自覚症状である変視症をパラメータとして、患者自身のセルフチェックでのAMD含む網膜黄斑疾患の経過評価法の確立を目指す。 初年度は、M-CHARTSで定量化される変視量とOCTで評価される網膜形態との関係性を評価するため、AMD患者を対象に基礎データの収集を行った。データはすべて匿名化し電子カルテから切り離した解析用パソコンにて管理し評価を行っている。経時的な評価として、OCTでwet(出血や滲出性網膜剥離、網膜内浸出液貯留あり)と定義される状態からdry(それらが消失した状態)と定義される状態になった場合に、変視量が減少する傾向があることを確認した。そこでタブレットを用いた簡易検査プログラムの開発を並行して進めている。M-CHARTSで測定できる範囲は中心窩から10度内であり、病変部位によってはM-CHARTSでは変視を検出できない症例があることがわかった。また、M-CHARTSでは主に中心窩含む垂直、水平ラインでの変視を検出するため、同時に行っている変視定性検査であるアムスラーチャートでは変視を検出する一方で、M-CHARTSでは変視を検出しにくい症例もあることがわかった。そこで、M-CHARTSとアムスラーチャートを組み合わせたソフトウエアを現在開発中であり、より広角に検査できるタブレット端末を用いた簡易スクリーニングを今後開始する予定である。 また網膜形態異常のパターンが変視の定量化に影響している可能性を見出した。網膜偏位量は網膜視細胞と網膜色素上皮細胞との位置関係の変化量を示唆している可能性が推測される。ただしまだデータ数が少なく、今後もデータの蓄積をしながら変視の病態についても検討を続けていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に症例データを蓄積し、現在までに蓄積されたデータからM-CHARTSでの変視量の変化量とOCTで評価される網膜形態変化に経時的に関連性があることを確認した。現在、さらなる症例データの取得を継続しており、またタブレットを用いてより広角に簡易に変視定量化可能なソフトウエアの開発を進めている。進捗状況としては概ね予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、通常のM-CHARTSでの測定データ収集を進め、結果についての解析を継続する。 現在進行中の変視定量化ソフトウエアの開発が完了し次第、現在までに蓄積した症例含めた主にAMD症例を対象に、タブレット端末を用いた新たな変視定量検査法を開始する。そして得られたデータより、最適な測定条件となるようデータ収集の段階で必要に応じて測定条件等の修正を行いながら、データ収集を継続する。これにより、それぞれの推定網膜領域での変視量を定量化することが可能となり、そのデータに関しても解析を進めていく。またOCTでの網膜形態変化と変視量の対比をより詳細に行うことができるようになるため、変視の病態解明にも繋がるデータが得られると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
カード型ソフトウエアの開発から、タブレット端末でのより広角での検査が可能な変視定量ソフトの開発に変更したため、当初予定していた高解像度モニターが不要となり、その繰越使用分で、ソフトウエア完成予定の次年度にタブレット端末を追加購入予定である。
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