日本国内では毎年約5000人が新たに脊髄損傷と診断され、受傷者総数は10万人以上にのぼると報告されている 。脊髄損傷に伴う医療費は身体障害そのものへの充当に加えて、車いす生活上の諸制約や二次障害の発生などの大きな潜在的社会損失をはらんでおり、医療の充実とともに脊髄損傷者の社会的支援は急務の課題とされる。また、脊髄損傷者の医療費と介護費を合わせた費用総額は年間3480億円と推計され、大きな社会的損失となっている。さらに、下肢装具は、従来身体の不自由な人が使うものという考えがあったが、わが国は数年後には5人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎えるので、下肢装具の需要は高まっていく。 本年度は、更なるCFRP適用範囲の拡大のために、軽量かつ優れた機械的特性と柔軟性を活かし、ばね材料としてCFRPなどの複合材を使用することを検討した。下肢装具は注文設計であるため、使用者の体格に適した形状を個別に検討することは困難である。そのため、本研究では、積層板の一部を波状にし、局所的にばね定数を低下させて1自由度を持たせた波状積層板の曲げ特性を解析上で取得することを目的とした。まず、実験における曲げ特性と解析における曲げ特性を比較するため、2種類の波状積層板を作製し、実験的に曲げ特性を取得した。次に、平板および波状積層板の解析モデルを作成し、曲げ特性に関する解析をおこなった。そして、解析モデルの妥当性を検証した上で解析上の平板および波状積層板の曲げ特性を比較した。その結果、波状積層板は、波状形状を任意の方向に付与することで剛性変化をもたらすので、下肢装具設計においても、形状の異方性をうまく活かす設計ができる。
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