研究実績の概要 |
発話障害の診断プロセスは時間と労力を要し、専門家による主観的な判断となる。そのため、音響分析等によって音声信号の特徴を客観的に調査することが非常に重要である。本研究では、発話障害の診断を簡易に行うために、健常者と発話障害者の音声データ(単音、母音)について音声信号の周期と振幅のゆらぎに着目し、数値解析を行った。周期変動指数PPQ、振幅変動指数APQ、改良版周期変動指数MPPQ、改良版振幅変動指数MAPQ、ジッタ係数JF、シマ係数SF等の特徴量を用いた。さらにデータ数のマッチングを行う為に、傾向スコア逆確率重み付け推定法(Inverse probability weighting: IPW)の適用を提案した。データのバイアスを除去するために、年齢カテゴリと疾患カテゴリで傾向スコアを算出している。傾向スコアの逆数を使用して2群のばらつきを一致させ、背景因子を調整した。統計解析にはソフトウエアIBM SPSS Statistics 29 (Chicago, USA)を用いた。多重ロジスティックス解析を行った結果、健常者と発話障害者の受信者操作特性(Area Under the Curve: AUC)は、0.781だった。ゆらぎ解析を用いて、異常な調音を検出するモデルを予測でき、発話障害の診断と治療に有効であることを確認した。臨床でも用いられている音響解析ソフトウエアPraatでも解析に加えて、数値解析ソフトウエアMATLABとの比較も行った。動的時間伸縮法を用いて信号間の距離を算出した個人間での時系列データ類似性解析、線形予測分析スペクトル分析等も検討し、様々なアプローチで検討することが可能となった。発話機能をセンシングすることで臨床解析結果をフィードバックして、リハビリテーション支援に繋げるために、発話障害の簡易診断システムを開発できた。
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