本研究では、「少なくとも一部の精神疾患患者においてはミクログリア過剰活性化が起こっており、薬剤によるミクログリアTRPチャネルを介したミクログリア活性化制御が治療になるのでは?」という仮説をたてて、その解明のために、精神疾患モデルマウス実験とともに、精神疾患患者由来iMG細胞を用いた橋渡し研究による双方向性アプローチで仮説解明を志してきた。 (1)モデルマウス実験では、研究代表者らが見出してきたマウスミクログリア細胞を用いたin vitro実験(Sato-Kasaiら2016)の妥当性を検証するために、モデルマウス(統合失調症およびうつ病関連モデル)において脳内のどのような部位でミクログリアが過剰活性化しているか免疫染色等により同定し、こうしたミクログリア活性化を特定の向精神薬およびTRPMチャネル拮抗薬が制御するか、そして、疾患表現型をレスキューするか(治療的に働くか?)を測定・解析してきた。薬剤誘導性の疾患関連モデルマウスの作製に成功し、その薬剤(フィンゴリモド)の影響を調べ、脳内の特定の部位での活性化を制御する可能性を見出すことに成功した。 (2)精神疾患患者由来iMG細胞を用いた橋渡し研究:精神疾患患者由来iMG細胞を作製し、ディッシュ上のiMG細胞にその向精神薬(アリピプラゾールを含む向精神薬)およびフィンゴリモドを投与し、そのサイトカイン応答などの影響を測定し、臨床データとの相関を解析してきた。最終年度はコロナ禍の影響で症例数は限られたが、今後解析結果をまとめて論文報告する予定である。
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