研究実績の概要 |
本研究では、細胞外マトリックスタンパク質であるペリオスチンを基盤とした皮膚悪性腫瘍における発症と悪性化の機序の解明、ペリオスチンがバイオマーカー、さらには創薬の標的となりうるか検討することを目指す。 1,ペリオスチンによる皮膚悪性腫瘍の発症と悪性化機序の解明(1) 皮膚悪性腫瘍においてペリオスチンを誘導する因子の同定:マウスの線維芽細胞を腫瘍関連のサイトカインで刺激し、ペリオスチンの発現が誘導されるかどうか解析した。IL-13,TNF-α,TGF-βによりペリオスチンの発現は強く誘導された。(2)皮膚悪性腫瘍におけるペリオスチンの作用の解析および協調的に作用する因子の同定:ペリオスチンをプレートにコートした単層培養でIL-13,TNF-α,TGF-βで刺激し、腫瘍細胞の形体や増殖、生存などを解析したが、明らかな増殖や生存に差はなかった。 2,ペリオスチンの皮膚悪性腫瘍バイオマーカーとしての検討 皮膚悪性腫瘍患者検体における解析:血管肉腫患者10例の皮膚組織を免疫染色し、腫瘍細胞周囲にペリオスチンが強く沈着した。また、基底細胞癌の中でも浸潤傾向の強いモルフィア型の患者10例の皮膚組織において腫瘍細胞周囲にペリオスチンが強く沈着した。一方、基底細胞癌でも浸潤傾向のない結節型などの患者組織20例ではペリオスチンは沈着しなかった。また、血清中のペリオスチンを測定できるELISA法により、皮膚悪性腫瘍患者の血清中のペリオスチンを解析した。血管肉腫患者8例、基底細胞癌患者12例の血清中のペリオスチン値を測定したが、健常者と比べ明らかな上昇を認めなかった。 これまでの解析において、皮膚組織の免疫染色の結果より、ペリオスチンは悪性度を反映したバイオマーカーであり、EMT(上皮間葉転移)に関与している可能性を考える。EMTを制御することは悪性化を抑制することであり、新しい癌治療戦略と考えられる。
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