皮膚悪性腫瘍患者検体における解析:血管肉腫患者10例の皮膚組織を免疫染色し、腫瘍細胞周囲にペリオスチンが強く沈着した。また、基底細胞癌の中でも浸潤傾向の強いモルフィア型の患者12例の皮膚組織において腫瘍細胞周囲にペリオスチンが強く沈着した。一方、基底細胞癌でも浸潤傾向のない結節型の患者組織40例ではペリオスチンは沈着しなかった。また、血清中のペリオスチンを測定できるELISA法により、皮膚悪性腫瘍患者の血清中のペリオスチンを解析した。血管肉腫患者10例、基底細胞癌患者35例の血清中のペリオスチン値を測定したが、健常者と比べ明らかな上昇を認めなかった。 この解析において、皮膚組織の免疫染色の結果より、ペリオスチンは悪性度を反映したバイオマーカーであり、EMT(上皮間葉転移)に関与している可能性を考える。EMTは上皮性の腫瘍細胞が、より運動性の高い間葉系細胞の表現型を獲得し、転移を起こしやすくなった状態をいう。したがって、EMTを制御することは悪性化を抑制することであり、新しい癌治療戦略と考えられる。 皮膚悪性腫瘍におけるペリオスチンの作用の解析および協調的に作用する因子の同定:3次元細胞培養法の解析を進め、野生型またはペリオスチン欠損マウスの線維芽細胞とcell lineの共培養を行ったが、マウスのプライマリーケラチノサイトと線維芽細胞を用いた実験ほど表皮の構築がみられなかった。野生型とペリオスチン欠損マウスの線維芽細胞で腫瘍細胞の形体や浸潤、増殖、分化などに大きな差はみられなかった。
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