本研究は、PD法を用いて脂質コントロールに成功している男性HIV感染者における予防行動の工夫を明らかにすること目的とし、令和元年度では、平成29年度で実施したインタビュー調査の分析を行った。脂質コントロールに関する語りを抽出し、内容分析を用いて、カテゴリー化した。対象者の平均年齢は50.4±12.6歳、平均罹患期間は11年、平均インタビュー時間は32分であった。 インタビューを分析した結果、男性HIV感染者の予防行動の理由は、【HIVに感染したことで健康に長生きしたいと思ったから】【節約したいから】【外見を良く見せたいから】など10のカテゴリーに分類された。食事全般では、【3食のうち1食は健康的な食事ができるように食事のバランスを調整する】など8カテゴリー、運動は【隙間時間で体幹を鍛える】など8カテゴリー、禁煙の方法は【同僚と一緒に禁煙した】など3カテゴリーに分類された。予防行動の阻害因子として、食事では【食間や夜間の空腹】【甘いもの】があり、【個包装のお菓子や果物を食べる】【先に歯を磨く】【パートナーや友人と分けて食べる】などの対処を行っていた。運動では、【悪天候時】【面倒】があり、【音楽を聴きながら歩く】【とりあえず運動着に着替えてみる】などの対処を行っていた。禁煙では【周囲に喫煙者がいる】ことが阻害因子であり、【喫煙者に近づかない】【喫煙者と付き合わない】の対処を行っていた。周囲の人との関係性では、【生活全般や健康を心配してくれるパートナーや友人がいる】【野菜中心の食事が摂れるように支援してくれる家族やパートナー、友人がいる】【同居人や家族が食事を作ってくれる】など8カテゴリーに分類された。今後の介入プログラムでは、男性HIV感染者の特徴的な予防行動の理由や工夫に着目し、繋がりの深い周囲の人々を巻き込みながら、目標設定や予防行動の工夫について支援する必要性が示唆された。
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