研究課題
研究活動スタート支援
本研究は、第二大戦後のフランスで活躍した哲学者エマニュエル・レヴィナスが提示した人間をめぐる思索の内実と独自性を、同時代のフランス現象学に照らして考察した。本研究は第一に中期主著『全体性と無限』において人間の自己性の形象として導入される「自己のもとでの現前」という概念の内実を解明し、第二に、人間の理性をめぐるレヴィナスの思索の内実を考察することを通じて、記号をめぐる彼の分析がどのように彼の音の現象学と連関しているかを明らかにした。
哲学
本研究は、従来のレヴィナス研究において注目されてこなかった「自己のもとでの現前」という概念および記号をめぐるレヴィナスの分析に着目し、その意義を明らかにした点に学術的意義がある。また、近年、再生医療技術や人工知能の発展により「人間であるとはどういうことか」という問いが改めて喫緊の課題として現れているが、本研究の成果は、この問いに対して一つの哲学的な応答を提示するための基盤となる知見である。