朱熹『綱目』の正統論を理解するには、朱熹と同時期の広義の道学者を視野に入れる必要がある。彼らは、軌を一にするように、蜀漢正統論と諸葛亮礼賛の文章を残していたからである。 特に、湖南学の張南軒は『諸葛武侯伝』という諸葛亮の伝記を残す。張南軒が鼓吹する諸葛亮の「漢賊並び立たず」とする精神こそが、蜀漢正統論の淵源であり、張南軒が特筆大書し、また朱熹へと受け継がれた点なのである。 また、一時期朱熹は諸葛亮を「道統」上の人物としてすら位置づけようとしていた。後世混同される傾向のある道統論と正統論とは、朱熹の段階ですでに、接近していたと言える。
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