本研究「北宋時代の仏教文物とその歴史的意義 -真宗時代(997~1022)を中心に-」では、北宋第三代皇帝の真宗時代(997~1022)、なかでも宋朝が契丹と結んだ講和条約・セン淵の盟が締結された直後、天が皇帝を寿いだとされる天書の降臨や、帝王が行う報天祭儀である封禅など、国威発揚のための祭祀がさかんにとりおこなわれた大中祥符~天禧年間(1008~1021)の仏教文物に注目し、その歴史的意義を明らかにする。 本年度は、関係図書(『中国文物地図集』各省分)を入手し、資料分析・作品抽出を行うとともに、浙江省・江蘇省に位置する宋代に関係する仏教遺跡の調査を行った。南京(大報恩寺、覆舟山三蔵塔、霊谷寺、六朝博物館、棲霞寺)、蘇州(蘇州市博、瑞光塔)、寧波(天童寺、阿育王寺、保国寺、寧波博物館)、天台山(国清寺、隋塔、智者塔院、石橋、赤城寺、萬年寺、天台山博物館、台州旧城、龍興寺)に赴き、大報恩寺出土阿育王塔や瑞光塔など、真宗時代のとくに重要な仏教文物・遺跡の調査・熟覧を行った。 研究成果としては、第一に、真宗時代の代表的な仏教文物である長干寺址出土阿育王塔、瑞光塔出土真珠舎利宝幢について扱った論文「唐宋時代の毘沙門天像 -王朝の守護神-」(特別展図録『毘沙門天 北方鎮護のカミ』奈良国立博物館、2020年2月)を執筆した。第二に、瑞光塔出土真珠舎利宝幢を納入した木函に描かれた四天王図像と青蓮院伝来という伝承をもつ毘沙門天像(京都・泉屋博古館像)との図像の近似性について「青蓮院伝来毘沙門天像に関する一考察 」板倉聖哲・高岸輝他編『日本美術のつくられ方』 2020年6月(発行予定)で言及した。
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