研究課題/領域番号 |
19K20779
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
山田 小夜歌 日本女子大学, 家政学部, 助教 (40825204)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バレエ / 帝国劇場 / ヴァラエティ劇場 / ミュージックホール / 舞踊 / ダンス / 歌劇 / 浅草オペラ |
研究実績の概要 |
本研究は、帝国劇場に招聘されたバレエ教師・振付家・演出家G.V.ローシーの来日前および日本滞在中の芸術活動の内実と各活動期の影響関係を明らかにすることによって、彼を中心に展開された大正期日本におけるバレエのありようと、その意義について考察しようとするものである。 2019年度は、まず昨年度ほとんど実施できなかったローシーの日本での活動調査、とくに彼が座長を務め、ローヤル館(赤坂)を拠点に活動したローシー・オペラ・コミック(ローシー・オペラ)に関する資料調査を行った。これまで断片的にしか捉えていなかったローシー・オペラの上演活動の全体像を把握するため、地方紙をふくめて新聞広告や記事を改めて調査し、活動を時系列に並べて整理した。さらに、ローシー・オペラの活動の実態と影響をより具体的に捉えるため、早稲田大学演劇博物館、阪急池田文庫において浅草オペラ関係を含む雑誌記事の調査を行い、広く関係者の言説を収集・検証した。以上の調査研究に関する成果の一部は「舞踊家G.V.ローシーとローシー・オペラ・コミック:赤坂ローヤル館での試行錯誤」の題目で論文化した。 また、昨年度に続いてローシーの日本での実践の背景を確認するため、来日前のイタリアや英国での活動に関する資料収集および分析を進め、さらに彼の日本での諸実践との影響関係を検討した。それにより、19世紀末~20世紀初頭の英国ヴァラエティ劇場のあり方やバレエ作品、舞踊家の活動に関して、同時期イタリアのバレエ事情との共通性、さらには日本の帝劇やローヤル館との共通性、親和性が改めて確認できた。この考察は、お茶の水女子大学で行われたシンポジウムで発表し、浅草オペラ研究をはじめとする専門家らとのディスカッションを通じて多くの知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、主にオンラインのアーカイブやデジタルコレクションを用いてイタリア、英国バレエの関連資料と所蔵先を探索し、所蔵先と直接コンタクトを取って資料提供を依頼する方法で調査を実施したところ、ローシー自身が関与した作品の台本や譜面などを含めて、想定数を超える多くの資料(画像提供)の収集が叶った。一方で、新たに発見された一部の重要な一次資料の閲覧のため、現地調査を実施する必要性が顕在化した。そこで、今年度2~3月に海外調査を計画し調査機関にアポイントメントも取っていたが、新型コロナウイルスの影響により実施不可能となり、資料の閲覧が叶わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは本研究に不可欠な一次資料収集のため、今年度実現できなかった海外調査の実施を目指すが、現段階では実施可否の先行きが見通せない状況にある。引き続き調査機関とコンタクトを取って調査の実施をはかる。他方で、昨今の状況から従来非公開であった貴重資料のオンライン化と一部公開が進められている。そうした媒体を活用して別の視点から資料探索を試みるとともに、手元にある資料の分析をさらに進め、ローシーが移入したバレエのありようを多角的に描き出すことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度2月~3月に海外での一次資料調査を計画し調査機関にアポイントメントも取得済みであった。しかし、20年1月以降世界的に蔓延した新型コロナウイルスの影響により、現地調査機関からアポイント取消の可能性ありとの連絡を受けた。万が一当該機関での調査が不可能となれば、研究に必須となる一次資料の収集が叶わない。 以上の理由により、本年度の海外調査は実質不可能と考え、本研究の補助期間延長を申請し、承諾されたため次年度使用額が生じた。 今後の使用計画としては、まず海外調査実施を目指すことになるが、現段階では実施可否の先行きが見通せない状況にある。引き続き調査機関とコンタクトを取って調査の実施をはかりつつ、従来非公開であった貴重資料のオンライン化に伴う資料取り寄せ費用、手元にある資料の翻訳費用等に使用する予定である。
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