研究課題/領域番号 |
19K20779
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
山田 小夜歌 日本女子大学, 家政学部, 助教 (40825204)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バレエ / ミラノ・スカラ座 / ヴァラエティ劇場 / ロンドン / バレエ音楽 / クオ・ヴァディス / イタリア / 帝国劇場 |
研究実績の概要 |
本年度は、ローシーの来日前および日本滞在中各活動期の影響関係を検討するにあたり、とくにローシーとイタリアバレエとの結びつきを検証すべくミラノ・スカラ座附属図書館ほか現地での台本や上演プログラム、新聞・雑誌記事等一次資料の調査を計画していたが、昨年度につづき新型コロナウイルスの世界的パンデミックにより実現できなかった。 そこで本年度の主の課題を変更し、ローシーが来日以前に創作したと思われる作品、とくに比較的資料が多く現存するバレエ《クオ・ヴァディス》の分析を通して、彼の創作における手法や傾向、作品の特徴を考察した。テキサス大学オースティン校ハリー・ランサム・センターが所蔵する《クオ・ヴァディス》バレエ・コレクションは作品台本、振付ノート、楽譜等の資料から構成されており、作品の全体像と特徴をより立体的に明らかにすることが可能になる。台本と振付ノートの分析を進めたところ、作品の題材設定や群舞の構成において、19世紀末イタリアバレエを象徴する「バッロ・グランデ」作品群との共通性が確認できた。また、楽譜資料のうちピアノ譜には、各シーンの舞台描写や音楽表現、ダンスパートのリズム・速度の指示が詳細に記されており、これを振付ノートに記された登場人物の動きや群舞の構図・導線と照らしあわせることで、ある程度踊りと音楽とを紐づけることができた。ローシーが手がけた他の舞踊作品は楽譜が現存していないばかりか作曲者の明記すらない場合が多い中、同作の分析により彼の舞踊作品の音楽的特徴の一端を捉えることができたのは大きな収穫であった。しかし、楽曲をさらに詳細に分析するため楽譜資料をもとに楽曲を復元し録音する計画を立てていたが、諸事情により年度中に実現できなかった。年度末には準備の見通しが立ったため、次年度に実施する予定で研究期間を延長することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のとおり、新型コロナウイルスの影響により海外での一次資料調査が実施不可能となり、研究推進の方向性の変更を余儀なくされた。その中でも、資料所蔵先および現地研究者の協力のもとローシーが創作した《クオ・ヴァディス》の資料群を入手し、分析・検討した成果の一部を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度新たに着手したローシー振付のバレエ《クオ・ヴァディス》の分析を引き続き進める。上述のとおり、同作品はローシーの創作における手法や作品の特徴をより具体的に捉えるうえで重要となる振付ノートや楽譜といった貴重な一次資料が現存する。まずは今年度やり残した楽曲の復元と分析をすすめ、作品の音楽的特徴を検討する。そのうえで、同作の分析から導出されたローシー作品の傾向・特質を、これまでの作業や検証によって得られたローシーの生涯にわたる舞踊活動の情報に照らして整理し、言語化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は以下二つの理由により次年度使用額が生じた。 1)新型コロナウイルスの蔓延により、史資料調査のための海外施設訪問が不可能となった。 2)楽曲の復元を予定していたが、コロナ禍で申請者の他業務が増大し準備に十分な時間を費やすことができなかった。 この分は、楽曲復元の際の研究協力者への謝金と消耗品代に使用する予定である。
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