研究課題/領域番号 |
18H05570
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
李 思漢 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, 助手 (70822237)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 台湾 / 日本統治期 / 義太夫節 / 素人義太夫 / 植民地 |
研究実績の概要 |
本研究は義太夫節浄瑠璃の、植民地という特殊な時代や環境のもとでの発展状況、および大隅太夫の台湾巡業の経緯とその影響の解明を試みるものである。2018年度は大隅太夫の台湾巡業の重要な観客層として、従来の演劇史にあまり注目されてこなかった戦前台湾の日本人社会を中心とした素人義太夫の活動概況を解明するため、新聞や雑誌の関連記事を広範に調査・収集した。これらの資料の分析に通じて、まず、台湾に移住してきた素人義太夫の集会の頻度や規模、そして、植民地台湾における素人義太夫の隆盛、素人衆の集団の凝集力や実態が詳らかになりつつある。次に、台湾の素人衆(=子弟団)との比較することを通して、植民地台湾における日本アマチュア団体は宗教的性質も、権力や経済的問題に関わるような性質もないことが明らかになった。さらに、本来専業芸人向けの義太夫組織が台湾においては、素人義太夫によって設立されたということも、植民地における日本伝統芸能の発展の特徴として本研究に指摘されている。 上記の研究成果の発信については、早稲田大学演劇博物館が主催した「日本演劇・映画人の〈台湾時代〉」国際シンポジウム(2019年11月13日、於早稲田大学)では「日本統治期台湾に於ける素人義太夫の発展について」というテーマで女義太夫の台湾進出、素人義太夫の発展状況を詳しく紹介し、そして台湾在来の素人演芸である「南管」と「北管」を例にして、日本と台湾の伝統芸能の素人衆の異同を比較しつつ、植民地における素人演芸の特徴を説明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
日本統治時代の台湾における義太夫節浄瑠璃の発展実態を解明するため、現地で広範に資料調査をおこなったが、その過程で、研究対象に該当する文献、例えば『台湾日日新報』、『台南新報』の原本の判型が特殊、内容は判読不能の箇所が多数あったため、予定時間内で文献調査・資料収集を完遂するのが困難であることが判明した。 また、義太夫節の興行記録については、とくに戦前台湾で一番人気な女義太夫の場合、出演者に芸・娼妓と女義太夫が混在している状況が一般的である。両者を区別するため、日本国内の女義太夫の人名簿なとの関連記録を参照しつつ調査したが、東京から離れた地方出身で無名の女性太夫が多かったため、日本国内でも台湾進出した女義太夫の関連情報が欠如しており、未だ有力な資料を見付けることができていない。これは次年度に持ち越された課題である。
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今後の研究の推進方策 |
文献収集については、デジタル化されていない資料は海外現地調査の回数を追加し、調査・収集し続ける。また、調査済の文献は、一部はマイクロフィルム版が存在することが分かったため、マイクロフィルムを取り寄せ、デジタル技術を活用し、原本の判読が難しい箇所を補完することを試みる。一方、地方出身の女義太夫の興行記録の収集については、調査範囲を兵庫、四国に絞り込んでみて、該当地域の浄瑠璃関連団体や郷土資料館の協力を願い、当初の計画に沿って進めていく予定である。
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