研究課題/領域番号 |
19K20780
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
李 思漢 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, 助手 (70822237)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 女義太夫 / 素人義太夫 / 日本統治時代 / 台湾 |
研究実績の概要 |
今年度は前年度に引き続き、日本統治時代の台湾における義太夫節の興行記録に関連する文献資料の収集をおこなった。2018年度は主に『台湾日日新報』を中心に、明治時代の素人義太夫の活動関連資料を収集・分析したが、2019年度はとりわけ大正と昭和時代の発展の様相に着目した。資料収集の範囲について、『台湾日日新報』に加えて、『台南新報』、そして昭和期に創刊された『台湾芸術新報』、『台湾邦楽界』に掲載されている記事も整理し始めた。 これまでの研究成果の要点を次のようにまとめる。 (1)台湾の素人義太夫の活動は全島に広がっていき、島都たる台北や基隆に限らず、地方都市の台中、嘉義、台南、高雄にも素義連中があり、そして離島の澎湖にまで義太夫節を楽しんでいた素人の姿が見られたことが判明した。また、日本統治期の台湾において女義太夫の存在は極めて重要で、むしろ女義太夫のほうが正統な文楽より大きな影響力をもっていたという現象を指摘できた。 (2)日本統治期の台湾には日本各地から移住者が集まってきたため、寄席、女義太夫、素人義太夫は日本内地のように、それぞれの拠点において単独で活動、伝承されていくのではなく、ほかの日本伝統芸能と肩を並べて植民地で独自の発展を遂げ、同郷の繋がりをさらに強めるという役割も果たしていた。 研究成果の一部はすでに昨年11月に早稲田大学演劇博物館が主催した「日本演劇・映画人の〈台湾時代〉」国際シンポジウムで口頭発表をおこない、論文も同シンポジウムの予稿集に掲載されている。今後、台湾で中国語による発表をおこなう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2018年6月、台湾で事前調査の過程で、台湾所蔵の文献に関する調査や資料収集・分析の時間が予想以上にかかることが判明した。2019年の夏はすでに1回の現地調査をおこない、2020年2月、3月に再度現地へ調査を行う予定だったが、新型コロナウイルスの影響により、日本と台湾の出入国制限が厳しくなった。そのため、現地調査のキャンセルを余儀なくされた。研究用の一次資料は台湾にしか保存されていないものが多数あり、それらの資料が入手困難になるため、進捗状況は当初の計画より大幅に遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
海外渡航解禁後、現地調査の回数や滞在日数を増加するほか、資料収集方針を旧植民地関連資料から日本国内関連資料へと変更し、また、研究内容も戦前日本国内の芸人が台湾進出の動機の解明に焦点を絞る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年の年末から現在に至るまで、コロナ禍により現地調査ができないため、海外旅費の残額が発生している。 海外渡航解禁後、現地調査を行い、また、日本国内の資料調査も行う予定である。
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