研究課題
研究活動スタート支援
本研究は、従来の日本演劇史や台湾演劇史で看過されてきた植民地における宗主国の伝統芸能の発展様相を考察した。三代目竹本大隅太夫の台湾巡業の経緯を追究すると同時に、植民地台湾においては女義太夫と素人義太夫が特に大きな牽引役であり、彼らを中心に活動が盛んになっていった、という内地とは相当異なる伝統芸能の流行の特徴を明らかにした。また、日本と台湾との素人衆による芸能活動と その意識も比較し、移民社会であった台湾における伝統芸能の成立過程の一側面を検討した。
伝統演劇
従来の日本演劇史においては、「中央劇壇」以外の地域的な特色はあまり言及されておらず、各芸能ジャンルにおいてその芸風の伝承や発展の維持に欠かせない一般の芸人やアマチュア、また女性の存在も無視されがちである。よって、本研究は演劇史の研究方法の他、「民衆史観」を参考にしつつ、現在の日本国内の文楽史には語られていない外地の興行形態及び地域の芸術的な特徴を考察し、植民地という特殊な時代や環境のもとでの伝播の特徴の解明を試みた。日本の演劇史における空白部分を補填するものになると期待される。