言語における「一つの文」とは一般的に「一つのまとまった考えを表すもの」とされる。現代の書き言葉では「句点から句点まで」が「一つの文」と通常は見なされる。しかし中国語の物語文では、読点・句点による区切り方が日本語や英語などの言語と相当に異なっている。区切り方が異なるということは、「文」の観念、すなわち中国語において「ひとまとり」の観念が日本語や英語とは異なるということである。本研究は、中国語の「文」、つまり「ひとつのまとまった考え」とはどのように構成されているのかを、日本語や英語と比較の上で明らかにした。さらに、その修辞的特徴を明らかにし、中国語における表現可能性の問題を考えた。何をもって「ひとつのまとまった考え」とするのか、果たして言語によって違いはあるのだろうか。あるとすればどのレベルで異なるのだろうか。また、これに付随して、言語学と文学をつなぐ修辞文法の問題系列を発掘し、新たなパラダイムを構築している。 本研究では中国語の「複雑な文」の形成方式につちえ、「時間軸に沿って継起的に起こる出来事と連続構」「性質・状態性叙述の標点節を含む連続構造」「判断、説明、評価と連続構造」にわけて記述した。また、中国語ではこれらの構造を発展させて修辞的な構造も作り上げている。そこで、その修辞的な特徴についても明らかにした。さらに、書き言葉は歴史的な経緯を経て成立するものであるため、歴史的な経緯についても触れた。
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