本研究は「3D言語地図」を作成することによって、中国江蘇省徐州市で話されている徐州方言の実態および動態を社会言語地理学的観点から明らかにするものである。通常、言語地図は平面的(二次元)に作成されるが、これを立体的(三次元)に示すことで、ことばの地域差と世代差の両方を同時に可視化することができる。 最終年度となった令和2年度は、(1)論文の執筆、(2)「3D言語地図」作成手順を示したマニュアル作りをおこなった。 (1)前年度におこなった口頭発表の内容をもとに、中国語で論文を執筆し投稿した(徐州方言母語者所使用的親属称謂〈祖父母〉与〈外祖父母〉徐州方言母――由地理差異与年齢差異而産生的語彙変異)。本論文は、令和3年度中に東京外国語大学「アジア・アフリカ言語文化研究所」または日本地理語言学会から発行される電子出版物に掲載される予定である。 (2)本課題では、アメリカのOriginLabが開発しているデータ解析・グラフ作成ソフトウェア「Origin」を用いて「3D言語地図」を作成した。地図の作成にあたっては、「Origin」の正規国内代理店であるライトストーン社の担当者の方とオンラインミーティングツールを用いた打ち合わせを実施した。さらにその後、作成手順を示すためのマニュアル作りをおこなった。 令和元年および令和2年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初予定していた現地調査や文献調査が実施できず、また研究課題を完遂するだけの時間が十分に取れなかった。研究課題期間はこれで終了となるが、今後も引き続き「3D言語地図」を作成し、さらに自身のwebページを開設してこれらをweb上で閲覧できるよう整備を進める。
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