本研究は、研究代表者がこれまで扱ってきた滋賀県長浜市方言に見られる敬語運用の特徴に言語地理学的な位置づけを与えるべく、西日本諸方言の敬語運用の地理的バリエーションを明らかにしようとするものである。 最終年度(2年目)は、会話資料の分析をもとにした敬語運用の分布を明らかにするための調査を徳島県徳島市・岡山県岡山市においてフィールドワークを実施し、会話データの収集を行った。収集した会話データはほぼ文字化を終えており、現在確認・整備作業中である。調査に協力いただく方の体調不良や感染症の影響により追加・確認のための調査が行うことができなかったため当初の計画よりは遅れが生じることとなった。この点については本課題の発展的課題として行う調査の中で補完していく。 上記の調査の遅れが生じたため、それを補い今後の研究に示唆を得るため、方言文法全国地図を用いた分析に着手し、九州方言の敬語運用(「九州方言における甑島方言の敬語運用」日本言語学会第159回大会ワークショップ)および、全国方言の敬語運用(「日本語諸方言の敬語運用から見えてくるもの」国立国語研究所シンポジウム日本語文法研究のフロンティア ―日本の言語・方言の対照研究を中心に―:新型コロナ流行により開催は延期)に関する研究成果の報告を行った。 方言形成論について議論が深まりを見せていく中で、敬語運用の分布を明らかにすることで、形式の分布から読み取れるこれまでの方言形成論に新たな知見を もたらし、当該分野の議論をより深化させることに寄与し得る。
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