研究課題/領域番号 |
18H05583
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
仲谷 健太郎 清泉女子大学, 文学部, 専任講師 (20825294)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 上代文学 / 金石文 |
研究実績の概要 |
8世紀までに成立した日本の文字資料においては、その数は多くはないものの、歴史資料に韻文が記されているものが発見されている。それらの文字資料としての価値は評価すべきでありながらも、韻文作品として解釈するものは未だ少なく、日本古典文学研究の点からは捨て置かれているに等しい状況といえる。 2018年度は正倉院文書の楽書にみえる七夕を題とした漢詩、及びその詩序について考察を行った。この楽書は「造仏所作物帳」(続修正倉院古文書、第三十二巻)にみえるが、その全文に対する注解は現状みえず、詩序について詳論するものが一篇存するのみである。本年度の研究にあたって、既に私的に作成していた注解を、新たに発表された論や各分野の研究成果を取り入れ改訂した。そのうえで、注解については論文形式での発表を行うべく、現在執筆を行っている。また、『懐風藻』や『万葉集』に収められる詩歌との比較を現在進めており、典拠や表現性など、様々な角度からの差異の検出、及びその素因の考察につとめている。この考察については2019年度も引き続き行う予定である。 また、2019年度にからは骨蔵器をはじめとした金石銘文における韻文の研究を行う予定であるが、本年度は基礎的研究として、碑文における銘文の性質について考察するとともに、京都府宇治市の橘寺放生院の蔵する「宇治橋断碑」について考察を行った。当該銘文の注解を行うとともに、同時代の国内の文献、及び中国文学との比較を以てその表現性を考察した。この成果については論文を執筆し、掲載が決定している。 2019年度は「造仏所作物帳」の七夕詩についての考察を進めるとともに、金石銘文の研究範囲をより広げて行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初2018年度中に「造仏所作物帳」の七夕詩についての研究を終える予定ではあったが、同時代の七夕関係詩歌との比較を視野に入れ、より当該七夕詩の持つ性質について詳論する必要があると判断したため、2019年度も継続して研究を行うこととした。 ただし、2019年度に予定していた金石銘文研究についても2018年度より「宇治橋断碑」の考察を皮切りに開始したため、全体としての進捗は予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は「造仏所作物帳」七夕詩の考察をより深めるとともに、当初の予定通り、金石銘文の研究も展開していく。前者については同時代の七夕関係詩歌との比較検討を主軸とし、後者については申請時に予定していた「金銅威奈大村骨蔵器」銘文についての注解、及び同時代の墓誌等との比較研究を通し、その表現性の定位を図ることを目標とする。
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