本研究は、日本語が支配的な大学・学部において、いかにグローバルな多言語多文化社会に向けたコミュニケーション教育ができるか、またその意義はどのようなものかに迫る。2019年度は以下の成果が得られた。 (1) 人文系専門科目によるEMF認識: EMF認識とは、多言語主義における共通語としての英語(EMF)に関する理論・実践両面での学修のことであるが、本科研費テーマとデータ分析をもとにした研究論文が、間もなくELT Journalにて公刊される。また、2019年8月、その研究過程に関して大学英語教育学会国際大会で発表し、同11月、ビジネス分野との連携に関して同学会ELF研究会国際ワークショップで招待講演を行った。 (2) EMF認識の英語科目への応用: 今年度開始した共同研究では、相手国の参加者全員が途中辞退してしまったものの、2019年8月現在で明らかになっている知見をもとに、教育実践の観点から大学英語教育学会ジョイントセミナーで、言語政策の観点からELF国際学会(コロンビア)で発表した。そこでのフィードバックや、昨年度の招へい講師との議論をもとに、2019年12月、英語科目への応用に関するエッセイをJournal of English as a Lingua Francaにて共著(筆頭)で発表した。 (3) トランス文化教育の確立: トランス文化とは、「異文化」コミュニケーションという分野における、異質性や地域性に縛られないグローバルなアプローチのことであるが、これに関する草分け的教科書を研究協力者のウィル・ベーカー氏と共著執筆中である。同氏を2019年8月に招へいし、取得した新たなデータや出版された新たなデータの解釈に関して、3日間に渡って議論する機会を得た。現在、全12章のうち10章までが完成しており、2021年始めにRoutledgeより公刊される。
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