研究実績の概要 |
2018年度の研究期間中に、以下の論文を発表することができた。Ichiro Taida, 'History and Reception of Greek and Latin Studies in Japan', Almut-barbara Renger and, Xin Fan (eds.), Receptions of Greek and Roman Antiquity in East Asia, pp. 73-87, Nov. 2018. 西洋古典は西洋に起源を持つので、当然日本はある時期まで西洋古典学を欧米から受容する一方であった。この受容は16世紀にイエズス会士たちが日本に布教に訪れたことがきっかけである。彼らは学校を開き、そこでラテン語を教え、ラテン語の文法書や辞書を印刷し、イソップ物語など西洋古典文学も翻訳した。その後も受容は続いていくが、今日、日本から欧米に向けて発信する機会も増えている。日本人が研究成果を英語で発信したり、日本において世界的な研究会が開かれることもある(例えば2010年の東京における国際プラトン学会)。こうした一方的な受容から発信へとスタンスが変わった大きなきっかけは、日本西洋古典学会が1950年に設立されたことにあるだろう。本稿では、日本において西洋古典が受容(reception)されていた時代、すなわち16世紀から日本西洋古典学会誕生までの歴史を概観したものを発表した。 また以下の論文も発表した。泰田伊知朗、「フランシスコ・ザビエルが携わったアジアにおける語学教育」、『観光学研究』、18、pp. 117-125、2019年3月。フランシスコ・ザビエルはヨーロッパを出てからインド、東南アジア、日本などで布教活動を行なった。本稿ではアジアにおいてザビエルが推進したラテン語教育について概観した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度後半において2本の論文を発表することができた。また前野良沢によるラテン語原典の日本語への翻訳に関する論文(Translation of Latin Texts of the Edo Period, by the Japanese Scholar Maeno Ryo;taku)も投稿中である。2019年度は5月に慶應大学にて「ワークショップ日本における西洋古典受容」、11月に台湾大学にてInternational Symposium on European Languages in East Asiaという研究会に参加予定である。2つの会でも日本、アジアにおける西洋古典受容について論じる予定にしている。また11月に台湾輔仁大学で開かれるTaiwan Association of Classical, Medieval and Renaissance Studiesにも参加する。そこでは申請者はギリシャの叙事詩に関する発表を行う予定であるが、アジアにおける西洋古典の受容というトピックはその会に参加する研究者たちにとっても非常に関心の高いテーマである。このトピックについてアジアの研究者たちと論じあうことによって、自身の研究を深めていきたい。これらの研究会への準備も着々と進めている。以上のことから概ね順調に推移していると判断している。
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